桐生市立図書館

桐生市立図書館は、群馬県桐生市稲荷町に位置する公共図書館です。その歴史は、昭和初期にまで遡ります。当時、近隣の市町村で公立図書館が開設される中、桐生市にも図書館を求める声が高まりました。しかし、市の財政状況から、その要望は一時実現に至りませんでした。

転機が訪れたのは、1933年の皇太子明仁の誕生を記念した事業として、1934年に斎藤長平氏が図書館用地として土地を寄贈したことです。この寄贈をきっかけに、吉野喜代松氏と朝倉茂三郎氏がそれぞれ1万円の建設費を寄付し、さらに地元出身の講談社創業者である野間清治氏をはじめとする多くの人々が建設費を寄贈しました。その総額は約23,500円に達し、これを受けて1935年1月に桐生市議会は図書館開設を全会一致で議決しました。

同年3月には、後に桐生第一高等学校となる場所で図書館の建設が始まり、9月には建物が完成しました。建設中の7月には群馬県知事から設置認可を受け、8月末には初代館長として中曾根都太郎氏が、司書として岸和田政雄氏が任命されました。そして、1935年11月3日、桐生市図書館は正式に開館しました。

開館当初から、桐生市立図書館は単なる図書の貸し出し場所にとどまらず、刀剣展や高山植物展などの展覧会、レコードコンサートなど、文化センターとしての役割も果たしてきました。

1979年11月6日には、桐生市立中央公民館と同一の建物内に新館が併設され、現在の桐生市立図書館として生まれ変わりました。新館には、市民ホール（旧：桐生市文化センター）、天文台、観測室、プラネタリウムなどが併設され、市民の文化活動や学習の拠点として親しまれています。

年表

1935年（昭和10年）
2月11日 - 斎藤長平氏が小曽根町の土地を寄贈。
3月 - 吉野喜代松氏が建設費1万円を寄贈。
4月 - 朝倉茂三郎氏が建設費1万円を寄贈。
1935年（昭和10年）
3月 - 着工。
7月 - 群馬県知事から設置認可を受ける。
8月 - 初代館長として中曾根都太郎氏、司書として岸和田政雄氏を任命。
9月 - 竣工。
11月3日 - 小曽根町に開館。
* 1979年（昭和54年）11月6日 - 稲荷町（現在地）の新館が完成し、「桐生市立図書館」に名称変更。

桐生市立図書館の蔵書の中でも特筆すべきは、野間清治氏が寄贈した「野間文庫」です。野間氏は、自らが創業した講談社が刊行する新刊を継続的に図書館に寄贈しました。第二次世界大戦中には一時中断しましたが、戦前から続くこの寄贈は、図書館の貴重なコレクションとなっています。1979年の新館移転以前の記録が不完全なため、正確な詳細は不明ですが、2015年3月時点で45,164冊が「野間文庫」として所蔵されています。また、野間文庫以外にも、羽仁五郎氏の「羽仁文庫」など、桐生市出身者による寄贈文庫も多数存在します。図書館全体の蔵書数は、約29万2000冊に及びます。

図書館の周辺には、新川公園、群馬県立桐生高等学校、樹徳中学校・高等学校などの施設があり、地域住民の生活と文化に深く根ざした図書館として、今日も多くの人々に利用されています。

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