森士

森 士：浦和学院高校野球部の名将とその功績

森士氏は、1964年埼玉県浦和市（現さいたま市南区）生まれの教育者、そしてアマチュア野球指導者です。浦和学院高等学校副校長を務める傍ら、NPO法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブの理事長も担っています。現役時代は投手として活躍しましたが、高校時代は怪我に悩まされ、ベンチ入りを果たせませんでした。この経験が、後の指導者としての哲学に大きな影響を与えています。

幼少期から高校時代：野球への情熱と挫折

小学校2年生から軟式野球を始め、週末には父親と二人三脚で練習に励みました。父親は野球経験者ではありませんでしたが、剣道経験者ならではの厳しさで、礼儀作法を徹底的に教え込んだといいます。中学校時代には、横浜スタジアムで開催された全国大会で3位入賞を果たし、1試合10奪三振の活躍で新聞にも掲載されるほどの才能を見せつけました。

しかし、高校時代は怪我に苦しみます。1年生の夏に腰を痛め、2年生では右肘に遊離軟骨を発症。手術後も7割の力しか回復しない可能性があると告げられましたが、野球への強い情熱から手術を決意しました。3年間ベンチ入りはできませんでしたが、練習への熱意は誰にも増して高く、恩師である野本喜一郎監督からも高く評価されていました。野本監督は後に「森は一番練習していた」と語っていたと伝えられています。

高校卒業後は、野球を続けるか、教員になるかを悩んだ末、東洋大学に進学。大学2年時には、恩師の野本監督が浦和学院高校の監督に就任。大学卒業後、浦和学院高校野球部のコーチ、そして監督への道を歩むことになります。しかし、大学4年の夏、野本監督は惜しまれつつも他界。森氏は、恩師の遺志を継ぎ、浦和学院高校野球部の監督として新たな時代を築き始めました。

浦和学院高校野球部監督時代：甲子園常連校への躍進

1991年、27歳の若さで浦和学院高校野球部の監督に就任。就任早々、秋季関東大会でベスト4入りを果たすと、翌年には選抜高等学校野球大会でベスト4に進出しました。以降、長年にわたりチームを甲子園常連校へと育て上げました。

森監督の指導は、技術指導だけでなく、人間教育にも重きを置いています。挨拶やマナーを徹底し、選手たちの人格形成にも力を注ぎました。試合前後の選手たちの深々としたお辞儀、スタンドの控え部員による感謝の挨拶は、森監督の指導が行き届いている証です。

また、自身の高校時代の怪我の経験から、選手たちのケガ予防に力を入れました。栄養士による食事指導や健康管理を積極的に導入し、選手たちの体作りをサポート。その結果、選手たちは大きく成長しながらも怪我を少なく、活躍を続けました。

数々の輝かしい実績を残しました。2008年には南埼玉大会で優勝、県史上初の夏の大会3連覇を達成し、自身と長男の親子で甲子園出場を果たすという快挙を成し遂げました。2013年には、選抜高等学校野球大会で優勝、春夏通じて初の全国制覇を達成しました。これは、県勢としては45年ぶり2度目の快挙でした。

これらの功績により、数々の賞を受賞。彩の国功労賞、さいたま市長特別賞、教育功労賞、埼玉文化賞など、数々の栄誉に輝きました。2017年には早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了し、スポーツ科学修士を取得しています。

2021年、浦和学院高校副校長に就任。夏の甲子園大会を最後に監督を退任し、長男が後任監督に就任しました。

指導者勇退後：次世代育成への貢献

監督退任後は、「NPO法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブ」を設立し、理事長に就任。青少年の健全育成、指導者育成に尽力しています。講演会やイベント開催、技術・学習指導、食育・医療、指導者育成プログラムなど幅広く活動し、文武両道を目指す中学生を対象とした野球塾も運営しています。部活動のあり方や長時間労働の問題などを踏まえ、地域社会に貢献できる人材育成を目指しています。2022年にはさいたま市文化賞を受賞するなど、その功績は高く評価されています。2023年には、日本高野連と朝日新聞社から「育成功労賞」を受賞しました。

まとめ

森士氏は、選手として、指導者として、そして教育者として、常に野球界、そして教育界に貢献し続けてきました。その功績は、数々のタイトルや受賞歴だけでなく、育成した多くのプロ野球選手、そして彼らが社会で活躍する姿に表れています。これからも、教育者、指導者として、次世代を担う若者の育成に尽力していくことでしょう。

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