汚れた血

映画『汚れた血』の世界

1986年に公開されたフランス映画『汚れた血』（Mauvais sang）は、レオス・カラックスが監督を務めた異色の作品です。この映画は、主にメロドラマとフィルム・ノワールの要素を組み合わせた、近未来を舞台にした青春ドラマとなっています。アレックスという青年の物語を通して、彼が抱える思春期の痛みや孤独、愛の渇望が色鮮やかに描かれています。

概要とスタッフ

『汚れた血』は、カラックスのアレックス3部作の第2弾にあたります。長編映画としては初めてのカラー作品であり、彼の独特な美的感覚が光る一作です。この映画は、アレックスの心の葛藤と恋人との関係を中心に展開します。製作にはアラン・ダーンとフィリップ・ディアスが関与し、優れた撮影監督ジャン＝イヴ・エスコフィエが夜のパリの美しさを引き立てています。また、音楽にはベンジャミン・ブリテンの作品が使われ、主題歌にはデヴィッド・ボウイの『Modern Love』が採用されるなど、音楽面でも強い印象を残します。

ストーリーの概要

物語は、愛のないセックスによって広がる奇病「STBO」が蔓延するパリが舞台です。主人公アレックスは、幼少期からの孤独感に苦しみながらも、恋人リーズと共に何とか生き抜こうとしています。しかし、彼の生活は虚しさから逃れられず、また腹痛にも悩まされています。アレックスは、自分の人生をこのままでは終わらせたくないと感じながら、日々の暮らしに倦怠感を覚えています。

しかし、生死を脅かす出来事がアレックスの生活を一変させます。行方不明だった父親が地下鉄で轢かれ死亡し、その影響で父の友人マルクは莫大な借金を抱えることになります。マルクはSTBOのワクチンを盗んで密売する計画を立て、そのためにアレックスを人材として見つけ出します。アレックスは最初は参加をためらいますが、マルクの恋人であるアンナと出会い、その瞬間に運命を感じ、物語は彼の人生の新たな方向へ向かい始めます。

映画の視覚的な魅力

『汚れた血』は、レオス・カラックスにとって初めてのカラーフィルム作品であり、特に夜のパリの景色に力を入れています。撮影の際には、ジャン＝イヴ・エスコフィエと緻密なテストが繰り返され、斬新で印象的な映像表現を実現しています。多くのシーンがナイトショットで構成されており、色と光が物語の感情を巧みに引き出します。

『汚れた血』は、青春の痛みを描きながらも、愛や自由への強い渇望をテーマにした作品として、観客の心に残ることでしょう。カラックスの独自の視点と演出が、映画の魅力を一層深めています。

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