河鍋暁斎記念美術館

河鍋暁斎記念美術館は、埼玉県蕨市に位置する、幕末から明治時代にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎の個人美術館です。この美術館は、単に作品を展示するだけでなく、暁斎の画業を顕彰し、その門下生たちの活動を広く認知させるという重要な役割を担っています。

美術館の設立は、暁斎の曾孫である河鍋楠美氏が、自宅を改装したことに始まります。1944年（昭和19年）の強制疎開で蕨市に移り住んだ楠美氏は、1977年（昭和52年）11月3日に美術館を開館しました。当初は、楠美氏が眼科医であったため、現在の第一展示室のみが美術館として公開され、開館日は休診日の木曜と日曜祝祭日に限られていました。

美術館設立当初から、楠美氏は研究と出版活動にも力を入れていました。開館翌年には河鍋暁斎研究会（現在の美術館友の会）を発足させ、講演会を開催。1980年（昭和55年）には研究誌『暁斎』を創刊するなど、暁斎研究の拠点としての役割も果たしてきました。さらに、暁斎の弟子であったジョサイア・コンドルの没後65年忌や、暁斎の没後90年、99年忌といった節目には、特別なイベントを開催しています。

1986年（昭和61年）3月には財団法人として認可を受け、2012年（平成24年）には公益財団法人へと移行し、より公共性の高い運営を行っています。

美術館の収蔵品は、代々河鍋家に伝わる画稿や下絵など3000点余りを中心に、買い戻された暁斎の肉筆画や門人の作品も含まれます。これらの貴重なコレクションは、暁斎の芸術を深く理解するための重要な資料となっています。

また、年1回のシンポジウムや年2回の研究発表会を開催し、暁斎研究の中心的な役割を担っています。他の研究機関や研究者と連携し、暁斎の芸術的価値をさらに高めるための活動も積極的に行っています。

施設概要

住所: 〒335-0003 埼玉県蕨市南町4-36-4
開館時間: 10時 - 16時（16時まで入館可）
休館日: 毎週火曜・木曜日（祝日の場合は翌日）、毎月26日 - 末日（展示替え期間のため）、年末年始
入館料:
一般: 600円
大学生・高校生・65歳以上・障害者手帳提示: 500円
中学生・小学生: 300円

主な収蔵品

「文読む美人図」 絹本着色、河鍋暁斎
「閻魔大王と地獄太夫」 絹本着色、河鍋暁斎
「猫を抱く美人図」 紙本墨画、河鍋暁斎
「寛永時代美人図」 絹本着色、河鍋暁翠
「百福の宴」 絹本着色、河鍋暁翠

交通アクセス

京浜東北線西川口駅（西口）下車、徒歩20分
JR京浜東北線蕨駅西口よりコミュニティバス「河鍋暁斎記念美術館」下車


河鍋暁斎記念美術館は、単なる美術館という枠を超え、暁斎の芸術と生涯を深く理解するための総合的な研究拠点としての役割も担っています。その活動は、暁斎の芸術を後世に伝えるだけでなく、美術史におけるその位置づけを確立する上で、非常に重要なものです。

参考資料

『開館30周年記念 河鍋暁斎記念美術館収蔵品目録』 財団法人 河鍋暁斎記念美術館、2008年5月6日
加美山史子 「河鍋暁斎記念美術館 ─開館以来の経緯と今後の活動について─」『聚美』VOL.16、聚美社、2015年7月1日、pp.84-87、ISBN 978-4-88546-300-6

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