流氷原

アルバム『流氷原』について

ヴァンゲリスが1980年に発表したアルバム『流氷原』は、サウンドトラックを除く彼の作品の中で特に注目される一枚です。このアルバムは、彼の以前の作品『天国と地獄』に続くもので、再びジョン・アンダーソンが参加したことが特徴です。アンダーソンは、プログレッシブ・ロックバンド「イエス」のボーカリストとしても知られており、本作では「サフォケイション」のトラックに声を提供しています。

アルバムには、以下の曲が収録されています:
1. アイ・キャント・テイク・イット・エニモア - I Can't Take It Anymore (5:38)
2. マルティトラック・サジェスチョン - Multitrack Suggestion (5:32)
3. メモリーズ・オブ・グリーン - Memories Of Green (5:44)
4. オール・オブ・イット - Not A Bit-All Of It (2:55)
5. サフォケイション - Suffocation (9:21)
6. シー・ユー・レイター - See You Later (10:22)

特に「メモリーズ・オブ・グリーン」は、映画『ブレードランナー』に使用され、アルバム『ブレードランナー』にも収録されています。このトラックは、映画の雰囲気を引き立てる重要な楽曲として、多くのファンに愛されています。アルバム自体は、プログレッシブ・ロックの要素が強く感じられ、当時の音楽シーンにおいて独自の位置を占めていました。そのため、アルバムの帯にもアバンギャルドな作風が強調されており、ヴァンゲリスの音楽性を際立たせています。

また、収録曲に加えて、録音されたがアルバムには収められなかった「My Love」、「Domestic Logic 1」、「Neighbours Above」、「Fertilization」という4曲があります。これらのうちの前の2曲はシングルとしてリリースされた一方、後の2曲は未発表となりました。このように、アルバム制作過程において多くの曲が構想されたことが伺えます。

さらに、ヴァンゲリスと同時期に活動を共にしていたPeter Marshがアルバムに参加しており、彼は同時期にヴァンゲリスの作曲・プロデュースによるシングル（Don't Be Foolish / Doesn't Matter）も発表しています。これにより、アルバム『流氷原』はヴァンゲリスの音楽的多様性を証明する重要な作品となっています。

興味深いことに、このアルバムの邦題「流氷原」と英語のタイトル「See You Later」は直接的な関連性が薄いものの、アルバムジャケットに描かれた流氷の風景がその訳の背景になっていると考えられます。つまり、視覚的な表現がアルバムの名前に影響を与えているのです。これにより、聴く側に深い印象を与える作品となっています。

要するに、ヴァンゲリスの『流氷原』は、彼の独創的な音楽性が集約された名作であり、ジョン・アンダーソンとのコラボレーションや映画との関連性など、様々な要素が交わることで、聴く人々に強い作品体験を提供しています。

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