清見関

清見関について

清見関（きよみがせき）は、現在の静岡県静岡市清水区興津にあたる、かつての駿河国庵原郡に位置していた関所です。その歴史は古く、清見寺に伝わる記録によれば、天武天皇の治世（673年 - 686年）に設けられたとされています。

立地と役割

関所が設けられた場所は、清見潟に山が迫り出す地形であり、東国からの侵入を防ぐ上で非常に有利な場所でした。海岸線に山が迫る地形を利用し、東国方面からの敵に対して、駿河の国やその先の京都を守るための重要な拠点としての役割を担っていたと考えられます。

清見寺の創立

清見関の近くに建てられた清見寺は、この関所の守りを固めるために、小さな堂宇を建て、仏像を安置したのが始まりと伝えられています。関所と寺院が密接な関係を持ち、地域の安全と信仰の中心となっていたことがうかがえます。

更級日記に描かれた清見関

平安時代の女流文学者、菅原孝標女が著した『更級日記』には、1020年に上総国から京へ旅する途中でこの地を訪れた際の様子が描かれています。そこには「関屋どもあまたありて、海までくぎぬきしたり」とあり、当時、海中にも柵が設けられていたことがわかります。この記述から、清見関が陸上だけでなく海上にも防御を施した、非常に堅固な関所であったことが伺えます。

衰退と地名としての存続

その後、清見関は『吾妻鏡』や『平家物語』などの歴史書にも登場し、この地付近で合戦も行われましたが、鎌倉時代になると、律令制の崩壊による経済基盤の喪失や、東国の統治が進んだことで軍事的な重要性が薄れていき、関所としての機能は次第に失われていきました。

しかし、清見関が設置された当初から、その周辺の景勝地である清見潟を指す枕詞や代名詞として「清見」の名称が用いられてきたため、関所としての機能が廃れた後も、この地域を表す地名としてその名前は残り続けました。現在でも「清見」という地名は、この地の歴史と景観を今に伝えています。

このように、清見関は古代から中世にかけて、軍事的な要所としての役割と、景勝地としての魅力を兼ね備えた場所であり、その歴史は現代にも語り継がれています。

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