潜水服

潜水服（せんすいふく）

水中での活動、すなわち潜水を行うダイバーにとって不可欠な装備の一つが潜水服です。これは、水中で人間の身体を保護し、外部環境から隔離するための特殊な衣服を指します。

潜水服の主な役割

潜水服の最も重要な役割は、保温と身体の保護です。水は空気よりもはるかに速く体温を奪うため、適切な潜水服を着用しないと、短時間で低体温症に陥る危険があります。また、水中の岩やサンゴ、沈没物といった障害物、あるいはクラゲのような海洋生物との接触から身体を守るクッションやバリアとしての機能も果たしており、「保護スーツ」と呼ばれることもあります。

潜水服の種類

潜水服は主にその保温方式や用途によっていくつかの種類に分類されます。

ウェットスーツ: 比較的浅い深度での潜水に適しています。生地に含まれる気泡の断熱効果により身体の熱を保持しますが、肌は直接水に触れるため、ある程度の濡れを伴います。深く潜ると高い水圧により生地内の気泡が圧縮され、断熱性能が低下します。
ドライスーツ: スーツ内部に水が入らない構造になっており、着用者の肌を濡らしません。このため、ウェットスーツに比べて優れた保温性を発揮し、特に冷たい水中での潜水に適しています。
ヘルメット潜水用スーツ: 古くからある潜水方式で用いられるスーツです。硬質のヘルメットと組み合わせて使用されます。
大気圧潜水服（ADS）: 深海での潜水に使用される装備です。内部を地上とほぼ同じ大気圧に保つことができる硬質の外殻を備えており、人体に水圧がかかることなく深海での作業を可能にします。

水中での温度管理

体温を維持することは、潜水活動において極めて重要です。潜水服による温度管理は、大きく分けて「断熱による保温」と「積極的に熱を供給する加温」の二つの方法があります。

断熱: ウェットスーツやドライスーツ自体が持つ断熱材（ネオプレンや内部の空気層）によって体温が外部に逃げるのを防ぎます。水温が15℃以上であればウェットスーツ、10℃前後ではドライスーツが必要とされます。
加温: 水温が10℃を下回るような極寒の環境では、断熱だけでは不十分であり、積極的に身体を温める加温服が必須となります。素肌では数十分で致命的な低体温症に至る危険性があるためです。
温水式加温服: 潜水支援船などからボイラーで温められた温水を供給し、スーツ内を循環させて身体を温めます。余分な温水はスーツ外へ排出されます。ダイバーは手元のバルブなどで温水の流量を調整し、温度を管理します。
電気式加温服: 下着のように着用し、電気で加熱する方式です。かつてはドライスーツの下に着用されていましたが、感電や断線、特定の部位が過熱するなどの問題が報告されたため、現在では温水式が主流となっています。

加温式潜水服の利用は1940年代に始まりましたが、温水式が広く使われるようになったのは1960年代に入ってからです。

温度管理のリスク

水中では体温の変化を感じにくいため、注意が必要です。体温が32℃以下になると低体温症の危険があり、逆にスーツ内の温度が45℃を超えると火傷を負う可能性があります。ゆっくりとした温度変化には気付きにくいため、低体温や体温過上昇の初期段階を見落とすことがあります。温水式加温服の場合、温水の供給が滞ると、スーツ内に残った温水である程度の猶予はありますが、バックアップがない場合、極寒の環境ではわずか数分で生命に関わる状況に陥る可能性があります。

下着の着用

多くの潜水服の下には、肌とスーツとの擦れを防いだり、共用スーツによる感染症のリスクを軽減したりするために、個人用の下着（インナーウェア）を着用します。

このように、潜水服はダイバーを水中の過酷な環境から守り、様々な活動を可能にするための非常に重要な装備です。水深や水温、潜水時間に応じて適切な種類を選択し、正しく使用することが、安全な潜水には不可欠です。

もう一度検索