烏枢沙摩明王

烏枢沙摩明王（うすさまみょうおう）

概説

烏枢沙摩明王は、梵語で「Ucchuṣma」と呼ばれる密教の明王の一尊です。様々な表記があり、「烏枢瑟摩」、「烏蒭沙摩」、「烏瑟娑摩」なども用いられます。この明王は真言宗、天台宗、禅宗、日蓮宗など多くの宗派で信仰されており、特に台密では五大[[明王]]の一つとして重要視されています。日蓮宗では「烏蒭沙摩明王」として知られ、火神や厠の神として信仰されています。

明王は『大威力烏枢瑟摩明王経』のような密教の経典に記載され、特に憤怒の姿で表現されることが多いです。不浄を清浄に変える力を持つため、心の浄化や日常生活のさまざまな不浄を浄化することで、多くの人々から信仰を集めています。「不浄潔金剛」や「火頭金剛」といった異名も持ち、彼の力強い性質を示しています。

功徳

烏枢沙摩明王は、烈火を用いて不浄を浄化するとされ、特に寺院の厠に祀られることが多いのが特徴です。そのため、主に不浄を清める神として崇拝されています。さらに、この明王には特別な力があると言われており、妊娠した母親の胎内にいる女児を男児に変える力も持っていると伝わっています。このため、男児を望む平安時代の貴族たちから熱心に信仰されていました。

現在、静岡県の明徳寺では、烏枢沙摩明王が下半身の病気に効能があるとされ、多くの信者に信仰されています。彼が持つ燃えるような力は、多くの人々の願い事を叶えると信じられています。

伝承

烏枢沙摩明王にまつわる伝説の一つは、『穢跡金剛霊要門』に記されています。この物語では、釈尊が涅槃に入ろうとした際、悲しむ人々の中でただ一人、蠡髻梵王が遊びにふけっていました。そこで、釈尊は神力を使い、不壊金剛を現しました。この金剛は汚物を一瞬で大地に変え、慢心を抱く蠡髻梵王を引き寄せました。この出来事を受けて、人々は金剛の力を讃えたのです。

真言

烏枢沙摩明王にはいくつかの真言が存在します。一般的な真言として「オン クロダノウ ウンジャク」というものがあります。また、臨済宗では「オン・クロダナウ・ウンジャク・ソワカ」と唱えられ、さらに『陀羅尼集経』にある「オン シュリマリママリ マリシュシュリ ソワカ」という真言も有名です。

像容

烏枢沙摩明王はその描写において異なる姿を持ちますが、一般的には右足を大きく上げた姿が多く見られます。また、蓮華の上に半跏趺坐している姿も著名です。髪は炎のように逆立っており、憤怒の表情が不浄を焼き尽くす力を象徴しています。彼の手には輪宝や弓矢などが描かれることが一般的です。特に、奈良の宝山寺の木像や、江戸時代に湛海によって造像された像が有名です。

烏枢沙摩明王を祀る寺院

烏枢沙摩明王は、各地に多くの寺院で祀られています。特に曹洞宗では、東京の海雲寺、富山県の瑞龍寺などがあります。真言宗では、千葉県の補陀洛山満願寺、京都府の狸谷山不動院などが代表的です。また、天台宗や浄土宗にも信仰の場が存在します。

このように、烏枢沙摩明王は多くの宗派にわたる信仰の対象であり、その持つ力と功徳は人々に希望を与え続けています。

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