甲州市立勝沼図書館

甲州市立勝沼図書館：ぶどうとワインの郷から世界へ広がる知の拠点

甲州市立勝沼図書館は、山梨県甲州市勝沼町に位置する公共図書館です。甲州市立図書館の4館の中で最大規模を誇り、特にぶどうとワインに関する充実したコレクションと、地域に密着した独自の取り組みで高い評価を受けています。

歴史：小さな図書館から地域を代表する文化施設へ

勝沼図書館の歴史は、1908年、勝沼尋常小学校に開設された附属図書館に遡ります。その後、戦時中の青年会による図書館活動を経て、戦後は山梨県立図書館の移動図書館「みどり号」の利用が盛んに行われました。しかし、長らく町内に常設の図書館はなく、1996年、ぶどうの国資料館として開館したのが勝沼図書館の始まりです。

開館にあたり、地域住民からの資料寄贈を呼びかけ、ぶどう研究者からの貴重な資料提供や、小佐野政邦氏からの多大な蔵書寄付もあり、開館当初からぶどうとワインに関する資料収集に力を入れてきました。現在では、専門誌から希少な古書まで、多岐にわたる資料を網羅し、研究者にも利用される貴重な情報源となっています。

2000年に勝沼町立図書館となり、2004年の甲州市発足に伴い、現在の名称となりました。開館から今日まで、貸出冊数や利用者数は増加を続け、地域住民の文化活動の中心的な存在となっています。

特色：ぶどうとワインを軸としたユニークな取り組み

勝沼図書館の最大の特徴は、ぶどうとワインに関する資料の充実度です。単なる蔵書にとどまらず、専門誌、希少な古書、ワイン関連のグッズまで収集し、独自の「ぶどう・ワイン十進分類法」を用いて体系的に整理されています。

さらに、新聞記事や雑誌記事、フリーペーパーなどのクリッピングを、ワイナリー別に個別ファイルを作成するなど、徹底的に情報を収集・整理し、地域産業を支える重要な役割を担っています。

これら膨大な資料を活用した企画展「ぶどうとワインの資料展」は、1998年の初開催以来、毎年テーマを変え、地域の歴史や文化に焦点を当てた内容で好評を得ています。歴史地理学者とのコラボレーションや、海外への取材など、その活動は地域にとどまらず国際的な視野も持っています。

また、図書館としては珍しい試みとして、閉館後の夜に地元ワイナリーを招いた試飲会「産地ワインの夕べ」を開催。ワイン資料を扱う以上「味を知ってもらうこと」が必要という発想に基づき、地域住民との交流を深める場となっています。

教育プログラム：「読書へのアニマシオン」と「カムカムクラブ」

勝沼図書館は、スペイン発祥の読書プログラム「読書へのアニマシオン」を積極的に取り入れています。このプログラムは、遊びを通して子どもの主体性を育むことを重視しており、2003年には、このプログラムを継続的に行うための会員制クラブ「カムカムクラブ」を設立しました。

「カムカムクラブ」は、小学校3、4年生を対象に、読書活動、郷土学習、図書館利用を柱とした活動を展開。ワイナリー訪問や寺での座禅など、地域資源を活かしたユニークな企画で、子どもたちの読書意欲を高めるだけでなく、地域文化への理解を深める役割も担っています。この取り組みは、2021年に博報賞を受賞し、高い評価を得ています。

施設：地域に開かれた、学びの空間

勝沼図書館は、延床面積1,160㎡、蔵書数14万冊以上と、甲州市立図書館の中で最大規模を誇ります。児童書コーナー、ワインコーナー、ラウンジコーナーなどを備え、快適な読書空間を提供しています。また、同一敷地内には「ぶどうの国文化館」があり、地域の豊かな歴史と文化を学ぶことができます。

交通の便は必ずしも良くありませんが、国道20号線や中央自動車道勝沼インターチェンジに近く、多くの観光客も訪れる場所です。周囲はぶどう畑が広がり、自然豊かな環境の中で、読書や学習に集中できる場所となっています。

まとめ：未来へ繋がる、地域に根ざした図書館

甲州市立勝沼図書館は、単なる蔵書施設にとどまらず、地域産業であるぶどうとワインを深く掘り下げ、独自のプログラムやイベントを通して、地域住民の文化活動に貢献しています。その取り組みは、高い評価を受け、日本の公共図書館の新たなモデルとして注目されています。今後も、地域に根ざした活動を展開し、未来へと繋がる知の拠点として発展していくことでしょう。

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