留保

留保の概要

留保（りゅうほ）とは、国際法における特定の制度であり、国が多国間条約への署名や批准の際に、一方的に自国に適用される規定を変更または排除する宣言を行うことを指します。この制度は、主に1880年代の多国間条約の一般化に伴い確立された国際慣習として理解されています。

留保の必要性

国家が多数国間条約に参加しようとする際、条約全体の趣旨や目的には賛同する一方で、自国の法律や文化的背景から特定の規定について受け入れられないケースが多々あります。そこで、留保の制度を利用することで、当該規定を自国に適用しない形で条約に参加する道が開かれ、これにより多くの国が条約の当事国となることが奨励されます。

留保を付ける条件

一般的には、留保は自由に付くことが可能ですが、以下のような制約があります。

• - 条約が留保を禁止している場合
• - 条約が特定の留保しか認めていない場合
• - 「両立性の基準」に反する場合

留保は、条約への署名、批准、受諾、承認または加入の際に宣言として表明されます。特に条約に別段の定めがない限り、1か国でも留保を受諾することで成立します。しかし、条約が明示的に留保を認める場合や、すべての当事国の同意が必要な場合は異なります。

留保と異議申し立て

留保が成立した場合、留保を付けた国と受諾した国の間で留保付きの条約関係が築かれます。一方、留保に異議を申し立てた国は、同様に留保付きの条約関係が成立します。特筆すべきは、異議申し立てを行う際に、留保国との条約関係を否定する意向を明示すると、条約関係そのものが成立しなくなる点です。

留保やその異議は、他国の同意なしにいつでも撤回が可能です。1969年の条約法条約においてこの制度が法典化されましたが、過去の国際慣習法と矛盾するものではありません。

留保の許容性

留保は条約の普遍性を促進しますが、無制限に認めてしまうと、各国間で異なる権利義務関係が生じ、条約の一体性が損なわれる可能性があります。第1次世界大戦後、国際連盟では全会一致の原則が採用され、汎米機構では留保を受けた場合でも留保国と受諾国間の条約関係が成立する方式が採られました。

国際司法裁判所（ICJ）は、留保の許容性を「両立性の基準」に基づいて判断するとしました。これは留保が条約の趣旨や目的と矛盾していない限り許されるという原則です。これにより、留保の質が条約の趣旨・目的とどのように連携するかが重視されます。一方で、留保が「両立性の基準」に反する場合に異議を申し立てる義務がどのように適用されるかは明確ではありません。

留保による影響

留保制度は、国際的に見てもその意義が問われることも少なくありません。特に1993年のウィーン宣言では、各国に対し留保を避けるように求められています。このような国際的な動きも、留保の実施に影響を与えています。

日本が留保している具体的な例として、国際人権規約や人種差別撤廃条約などが挙げられます。このような留保の存在は、国内法と国際法の関係をどのように調整するかという大きな課題を浮き彫りにしています。

解釈宣言との違い

解釈宣言とは、条約の特定の規定に関して解釈や適用範囲を明確にするためのものですが、留保とは異なり、自国への適用を排除したり変更したりする意図は持ちません。条件付解釈宣言という形をとる場合もあり、これは実質的に留保と同じ意味を持つこともあります。

このように、国際法における留保は複雑な側面を持ち、各国の法律や文化的背景に合わせた柔軟な対応が求められる重要な概念です。

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