番匠

番匠とは

番匠（ばんしょうまたはばんじょう）とは、中世の日本において木造建築に関わった工人を指します。この職業は、現代で言うところの大工の起源にあたるもので、木工（もく）とも呼ばれています。

番匠の歴史と背景

番匠の起源は、古代の律令制に存在した「番上工（ばんじょうこう）」に由来すると考えられています。これらの職人は、当初は政府関連の機関や地方の組織に所属し、必要があれば他の地域で作業を行うこともありました。しかし鎌倉時代に入ると、都市部を中心に特定の組織に属さない「散在工」が増加し、番匠間の競争が激化しました。これに伴い、13世紀から14世紀にかけて、「作事請負権」を持つ「大工職」が確立されました。

この「大工」は棟梁や引頭、さらには下位の番匠たちを指導・統率する役割を担い、雇主によって任命されていましたが、時には譲渡や売買によりその地位が移動することもありました。このため、雇主の権限は次第に形骸化していきました。また、大工職を巡るトラブルや賃金の高騰、作業の遅滞の問題も生じ、1510年には室町幕府が大工職の撤廃を命じるに至りました。船の建造に携わる番匠は特に「船番匠」と呼ばれています。

番匠の社会的地位と組織

番匠は、大工職の補任料を払う以外には税金の負担がなく、他の職業のように特定の組織に属することもなく、緩やかな棟梁層の集まりのみが存在しました。16世紀に入ると、戦国時代の大名たちは有力な棟梁を自らの領国に任命し、地域の番匠を統治する体制を築いていったのです。この大名支配の体制は、幕藩体制下の大工組織へと引き継がれることになります。

番匠の伝承と儀式

番匠たちは、建築に関わる全ての事に災厄が及ばないよう邪気を祓うための陰陽道に基づく祭事や儀式を実施していました。これらは「番匠棟上槌打」と称され、戦国時代において陰陽師が迫害を受けたにもかかわらず、「番匠」として高い地位を維持していました。名工である内藤昌は、この儀式が「木割書」として文書化されたことを指摘し、家相がこれに基づいて発展したと述べています。

しかし、番匠の流派は非常に多岐にわたり、様々な混乱が生じていました。この儀式を保存するため、昭和43年には番匠保存会が設立され、2014年には300年ぶりに興福寺での儀式が再現されました。この番匠から家相が生まれたという説には賛否があり、多くの学者が異なる意見を持っています。興味深いことに、一部の研究者は京都や江戸から遠く離れた東北地方における家相の研究を行っています。

結語

番匠という職業は、木造建築に深く関わり、その技術や知識は現代の大工や建築業にまで影響を及ぼしています。彼らの伝統や文化は、現在も多くの人々に引き継がれており、番匠の歴史を知ることは日本の建築文化を理解する上で重要です。

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