白衣の男

白衣の男

『白衣の男』（原題：The Man in the White Suit）は、1951年にイギリスで製作されたSFコメディ映画です。監督は軽妙なタッチで知られるアレクサンダー・マッケンドリック、主演は『大いなる遺産』や後の『スター・ウォーズ』シリーズで世界的に名を知られるアレック・ギネスが務めました。本作は、イギリス映画界を代表するイーリング・スタジオが手掛けた「イーリング・コメディ」の傑作の一つとされています。

SFジャンルに分類されますが、物語の核となるのは架空の科学技術であり、一般的なSF作品に見られるような近未来の描写や宇宙人の登場はありません。原作はロジャー・マクドゥガルの同名戯曲に基づいています。

物語の中心にあるのは、決して汚れることもなく、摩耗したり切れたりすることもない、まさに究極ともいえる新しい繊維を発明した一人の天才科学者と、その革新的な技術が既存の繊維産業に計り知れない損害をもたらすと危機感を募らせる業界の有力者たちが巻き起こす騒動です。この対立が、皮肉とユーモアを交えながら巧みに描かれています。

あらすじ

主人公のシドニー・ストラットン（アレック・ギネス）は、繊維工場で働く発明家肌の青年です。彼は独創的な発想を持ち、特に「永遠に劣化しない繊維」の開発に情熱を燃やしています。しかし、その研究に多額の会社の経費を費やしては発覚し、職を転々とする日々を送っていました。ある日、彼は職業紹介所を通じてバーンリー工場に職を得ます。当初は研究職ではなく一般の工員として働き始めますが、偶然のきっかけからバーンリー社長の令嬢ダフネ（ジョーン・グリーンウッド）と知り合ったことで、彼の秘めたる研究が注目されることになります。

ダフネの紹介もあり、シドニーの研究はバーンリー社長（セシル・パーカー）からも許可を得て、再び開発に没頭できる環境を手に入れます。幾度かの失敗を乗り越えた末、ついにシドニーは目標としていた汚れない、擦り減らない「究極の繊維」の開発に成功します。この朗報を聞いたバーンリー社長は歓喜し、この画期的な繊維を製品化し、市場に投入するための準備を精力的に進め始めます。大規模なマスコミ向けの発表会も間近に控えたある日、バーンリーのもとへ、繊維業界で絶大な影響力を持つキールロー卿（アーネスト・テシガー）が部下を引き連れて訪れます。

キールロー卿は、シドニーが開発した繊維がもし製品化されれば、消費者が衣服を洗濯したり買い替えたりする必要がほとんどなくなるため、繊維業界全体が未曽有の経済的打撃を被るとバーンリーに厳しく警告します。そして、この脅威を排除すべく、キールロー卿をはじめとする繊維業界の重役たちは、発明者であるシドニーの動きを封じ込めるためにあらゆる手段を講じ始めます。一方で、この繊維の存在を知ったバーンリー工場の工員たちもまた、自分たちの仕事が失われることを恐れ、シドニーに対して開発の中止や発明の放棄を強く迫るようになります。かくして、シドニーは自らの素晴らしい発明によって、業界の権力者たちと自分を慕っていたはずの労働者たちの双方から追われる立場となってしまうのです。

キャスト・スタッフ

出演者

シドニー・ストラットン - アレック・ギネス
ダフネ・バーンリー - ジョーン・グリーンウッド
アラン・バーンリー社長 - セシル・パーカー
マイケル・コーランド - マイケル・ガフ
ジョン・キールロー卿 - アーネスト・テシガー
バーサ - ヴィダ・ホープ

スタッフ

監督：アレクサンダー・マッケンドリック
原作：ロジャー・マクドゥガル
脚本：ジョン・ダイトン、ロジャー・マクドゥガル ほか
音楽：ベンジャミン・フランケル
撮影：ダグラス・スローカム

外部リンク

白衣の男 - allcinema
The Man in the White Suit - IMDb (英語)
The Man in the White Suit - AllMovie (英語)

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