益子陶器市

益子陶器市：陶芸の町を彩る一大イベント

栃木県芳賀郡益子町で毎年春と秋に開催される益子陶器市は、日本を代表する陶器市の一つです。春はゴールデンウィークを挟んだ4月下旬から5月上旬、秋は文化の日の前後、それぞれ約1週間程度の期間にわたり開催され、益子町全体を巻き込んだ一大イベントとして知られています。

歴史と発展：バーゲンセールから大陶器市へ

益子陶器市の歴史は1966年（昭和41年）にまで遡ります。益子焼窯元共販センターの宣伝活動の一環として始まった「バーゲンセール」がその始まりでした。当初は「陶器まつり」「やきもの市」など様々な名称で呼ばれ、検査で不合格になったアウトレット品を格安で販売するイベントでした。予想をはるかに上回る来場者と売上を記録し、年1回の開催から、1970年（昭和45年）には秋にも開催されるようになり、年2回開催の恒例行事となりました。

その後、塚本製陶所や益子陶芸村でも陶器市が開催されるようになり、益子町内には複数の陶器市が点在する状況が続きました。しかし、1981年（昭和56年）にNHKの番組で益子町が紹介されたことをきっかけに、「陶器市実行委員会」が発足。駐車場や案内板の整備が進み、翌1982年（昭和57年）には、それまで個別に開催されていた陶器市が「益子焼大陶器市」として統合されました。

参加店舗は増加の一途を辿り、1988年（昭和63年）には100店を超える規模にまで拡大しました。開催時期も一時、お盆の時期にも開催されるなど、益子町の活性化に大きく貢献しました。

困難と克服：震災とコロナ禍

2011年（平成23年）の東日本大震災では、多くの陶器が破損するなど甚大な被害を受けました。開催が危ぶまれましたが、陶芸家や町民の強い意志で「春の陶器市」は開催され、被災地の復興支援にも繋がるイベントとなりました。

2020年（令和2年）から続く新型コロナウイルス禍では、2020年春から2021年秋にかけて計4回の陶器市が中止となりました。しかし、オンライン陶器市などを開催するなど、工夫を凝らし、陶器市を維持しようと努力が続けられました。2022年（令和4年）に3年ぶりに開催を再開し、2023年（令和5年）には、感染対策を緩和しながら、春には約36万人、秋には約17万8千人の来場者数を記録しました。

課題と対策：渋滞と駐車場問題

数十万人規模の来場者数は、毎年大きな渋滞と駐車場不足という課題をもたらしています。益子町観光協会は、臨時駐車場の増設やシャトルバスの運行、情報提供サイトの活用など、様々な対策に取り組んでいます。特に2024年（令和6年）春からは、観光庁の事業採択を受けて、渋滞緩和対策を本格的に強化しました。田野小学校や田野中学校を臨時駐車場として活用し、シャトルバスの運行や駐車場の空き情報提供など、より効果的な対策が実施されました。

テント村：多様な魅力が詰まった空間

益子陶器市の大きな特徴の一つに、益子焼をはじめとする陶器販売店が参加する形式に加えて、町内各地に多くのテント村が設けられる点が挙げられます。城内坂通りや陶芸メッセ益子を拠点に約30ものテント村が出現し、約600ものテントが立ち並びます。益子焼はもちろん、笠間焼などの他産地からの作品や、木工・金工・ガラス細工などの工芸品、アクセサリー、衣料品、古道具など、多種多様な商品が販売されています。地元産の食品や飲食、生花なども販売され、賑やかな雰囲気を醸し出しています。

益子陶器市：未来への展望

益子陶器市は、益子町の伝統と文化、そして人々の活気を象徴するイベントです。来場者増加に伴う課題は残りますが、町を挙げての対策と、陶芸家や関係者の熱意によって、益子陶器市はこれからも発展を続け、多くの人々に感動と喜びを与え続けるでしょう。

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