盤上のアルファ

盤上のアルファ

『盤上のアルファ』は、塩田武士による小説で、将棋の世界を舞台にした物語です。2011年に単行本として講談社から刊行され、その後2014年に文庫版も発売されました。この作品は、著者自身が将棋ドキュメントを取材していた経験を生かし、約1年かけて書き上げたデビュー作です。また、第5回小説現代長編新人賞や第23回将棋ペンクラブ大賞文芸部門を受賞した作品でもあります。2019年にはこの小説を基にしたテレビドラマが放映されました。

あらすじ

物語の主人公、秋葉隼介は、神戸新報社で元々社会部の記者として働いていましたが、その経歴やプライドが影響し、将棋担当に異動させられます。上司に嫌われながらも、彼は文化部での新たな業務に奮闘します。ある日、彼は小料理屋で将棋に情熱を注ぐ真田信繁と出会います。真田はアマチュア全日本大会で優勝し、プロを目指して三段リーグへの編入試験に挑戦しようとしていました。

真田の情熱的な姿に触発された秋葉は、「真田がプロになれれば、俺は記者を辞めてやる」と言い放ち、真田を自宅に迎え入れることを決意します。同居生活が始まると、将棋に埋もれた日々が続き、仲間たちも次々に集まって賑やかな光景が広がっていきます。

真田との生活が進むにつれ、彼の過去に触れることになる秋葉は、真田の挑戦の記録を書き遂げたいと強く思うようになります。そして、三段リーグ編入試験が近づく中で、真田の成長や挫折を目撃し、その姿に感動する秋葉の思いも深まります。

登場人物

• - 秋葉隼介: 33歳の独身記者。傲慢な性格が影響し、将棋担当に異動。自分に誇りを持っているが、仕事に大きなストレスを抱える。
• - 真田信繁: 同じく33歳の独身。プロ棋士を目指して三段リーグ編入を狙う若者。愛用のタンクトップを身につけ、勝負を前に特別なゲン担ぎを行う。
• - 静: 将棋会館近くの小料理屋の女将で、秋葉の生活とも大きく関わる。
• - 遊佐加織: 女流棋士であり、秋葉が初めて関わった将棋の大会に出場した。彼女の存在も物語を彩る重要なキャラクター。

テレビドラマ

この小説を基にしたテレビドラマ『盤上のアルファ〜約束の将棋〜』が2019年に放送されました。主人公の視点から物語が描かれ、キャストには玉木宏や安井順平などが名を連ねています。ドラマは原作そのものを活かしつつも新たなキャラクターやストーリー展開を加え、より多くの観衆に感動を与えました。

結末

最終的に、真田は編入試験を通過し、プロ棋士を目指すことが確定します。その過程で秋葉は彼の成長を見守り、真田の記事を書きたいという思いが強くなっていきます。真田が去った後の寂寥感の中でも、秋葉は「この記事で彼の情熱や挑戦を世に伝えたい」と決意を新たにし、一歩を踏み出すことになります。

『盤上のアルファ』は、ただの将棋の物語ではなく、人物の成長や人間関係の描写を通じて、夢を追うことの意義や温かさを伝えています。

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