神谷神社

神谷神社：国宝の社殿が輝く、歴史と自然の調和

香川県坂出市に位置する神谷神社は、長い歴史と豊かな自然に抱かれた神社です。その中心となるのは、国宝に指定されている本殿。鎌倉時代初期の建造とされ、造営年代の明確な流造社殿としては日本最古のものです。荘厳な社殿は、神社の格式の高さと、人々の信仰の厚さを物語っています。

由緒ある歴史と神々

神谷神社は、古くから「神谷」と呼ばれる谷間に鎮座し、その名の通り神聖な場所として崇められてきました。社伝によれば、弘仁3年（812年）、空海の叔父にあたる阿刀大足が社殿を建立し、春日四神を勧請したと伝えられています。延喜5年（905年）成立の『延喜式』神名帳には讃岐国阿野郡に「神谷神社」として記載され、式内社に列せられています。

その後も神谷神社は、地域の人々から篤い信仰を集め、栄えてきました。建保7年（1219年）には、現在の国宝本殿が建立されました。棟木に残る墨書銘には、建立に関わった人物や詳細な年月日が記されており、当時の様子を知る貴重な史料となっています。明治時代には郷社に列せられ、今日まで脈々と続く歴史を誇ります。

祭神は、主祭神として火結命、奥津彦命、奥津姫命の三柱。相殿神として、春日四神（経津主神、武甕槌神、天児屋命、姫大神）が祀られています。これらの神々は、地域社会の安寧と繁栄を願う人々の信仰を集めてきました。

貴重な文化財

神谷神社には、本殿以外にも多くの貴重な文化財が伝えられています。国宝の本殿に加え、重要文化財に指定されている木造随身立像2躯は、鎌倉時代初期の作品とされ、その精緻な彫刻は見る者を魅了します。

さらに、坂出市指定有形文化財として、神社法楽連歌、舞楽面、写経大般若波羅蜜多経などが伝わっており、神谷神社の歴史と文化の深さを物語っています。これらの文化財は、神谷神社が長きにわたって地域文化の中心として機能してきた証左といえます。

境内と周辺環境

神谷神社の境内は、比較的小さく、静謐な空気が流れています。本殿の背後には、「影向石」と呼ばれる巨岩がそびえ立ち、古くから磐座として祭祀が行われていたと推測されています。周辺からは弥生土器なども出土しており、古代からの信仰の痕跡を感じることができます。境内には、本殿の他に摂社や末社が鎮座しており、それぞれに神々が祀られています。

神谷神社へのアクセスは、坂出駅から琴参バスを利用し、「高屋南」バス停下車後、徒歩約20分です。バス停から神社までは、豊かな自然に囲まれた道を歩くことができます。

近年の出来事と未来

2022年9月には落雷による被害を受け、本殿の屋根の一部が焼失するという痛ましい事故がありました。しかし、地域の人々の強い思いと、関係機関の尽力により、2023年10月には本殿保存修理工事が着工され、2025年秋の完成を目指しています。この修復工事は、神谷神社の歴史と文化を未来へ繋ぐための重要な取り組みです。

神谷神社は、国宝級の建築物、貴重な文化財、そして歴史と自然が一体となった、魅力的な場所です。訪れる人々に、静寂と神聖さ、そして歴史の重みを感じさせる、特別な空間です。

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