福井丸

福井丸は、右近権左衛門が所有していた鉄製の貨客船です。元々はイギリスで建造された「アバーゲルディ」という船で、右近権左衛門が購入し「福井丸」と改名しました。

概要

所有者: 右近権左衛門
種類: 鉄製貨客船
総トン数: 2943トン
全長: 97.6m
全幅: 11.9m
主機: 2連成汽機1基
出力: 241公称馬力
建造: 1882年、イギリスのサンダーランド造船所
旧名: アバーゲルディ（Abergeldie、アダム・ブラザース社所有）
購入: 1894年、右近権左衛門

日本海航路での活躍

「福井丸」は、主に日本海航路で運航され、人や物資を運びました。当時の日本海は、交通の要所であり、「福井丸」はその重要な役割を担っていました。

日露戦争での徴用と旅順口閉塞作戦

日露戦争が勃発すると、「福井丸」は海軍に徴用され、軍事輸送に従事しました。そして1904年3月、第二次旅順口閉塞作戦に投入されることになります。

旅順口閉塞作戦は、ロシア艦隊が停泊する旅順港の入り口を、船を沈めて封鎖する作戦でした。「福井丸」には、広瀬武夫少佐が指揮官として乗り込み、決死の覚悟で任務に臨みました。

「福井丸」は港口近くで投錨し、船内で爆薬を起爆させ自沈を試みましたが、ロシア駆逐艦「シーリヌイ」の雷撃を受け沈没しました。乗組員は駆逐艦「霞」に救助されましたが、広瀬武夫少佐を含む4名が戦死しました。

その後

その後、「福井丸」は引き揚げられ、明治40年に解体されました。

しかし、「福井丸」の物語はそこで終わりませんでした。海上自衛隊舞鶴地方総監部の海軍記念館には、「福井丸」の木材を使用した額縁が展示されています。その額縁には、「福井丸」から脱出する閉塞隊員の絵が飾られ、沈没していた当時のカキ殻が付着しています。それは、勇気と犠牲の象徴として、今も静かに語りかけているかのようです。

参考文献

真鍋重忠『日露旅順海戦史』吉川弘文館、1985年、ISBN 4-642-07251-9

関連項目

川口神社 (川口市)

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