私を月まで連れてって!

漫画『私を月まで連れてって!』の世界

竹宮惠子の『私を月まで連れてって!』は、1977年に発表された短篇「夢見るマーズポート」を原点とし、1981年から1986年まで『ビッグコミックフォアレディ』や『プチフラワー』に連載された人気漫画です。2005年には全6巻の完結版が出版され、この作品はファンに深く愛されています。

作品の背景

本作のタイトルは、ジャズの名曲『Fly Me to the Moon』からインスパイアされたもので、宇宙を舞台にした心温まるラブコメディです。物語は21世紀後半のアメリカが背景となっており、NASAに勤める宇宙飛行士と超能力を持つ少女の異なる世代間の恋愛物語として描かれています。作品の特徴のひとつは、さまざまな文学作品を引用・パロディ化したエピソードを多数含んでいる点であり、これによりSFに不慣れな読者にも親しみやすい内容になっています。

あらすじ

ダン・マイルドは、優れたA級宇宙飛行士でNASAに勤務している独身男性。彼の趣味はレトロなものや20世紀のSF作品であり、普段はのんびりとしている一方、緊急時には敏捷に対応する軍人の顔を持っています。彼が住んでいるアパートの階下には、17歳の超能力を持つ少女ニナ・フレキシブルがいます。彼女はダンに恋心を寄せており、二人の関係は心温まるほのぼのとしたもので、また時にはコミカルなドタバタが繰り広げられます。

ニナの兄であるアーチボルトは特別教育を受けた天才児で、彼もまた物語において重要な役割を果たします。さらには、平安時代から続く家系出身の温泉八重やシェラトン・グループの若き後継者ハリアン・シェラトンなど、多彩なキャラクターたちが一緒に生活し、さまざまな出来事を巻き起こします。彼らの交流は時には涙を誘い、時には笑いをもたらします。

登場人物詳細

ダン・マイルド

本作の主人公であるダンは空軍少佐でNASAのパイロットです。彼は未来的な職業を持ちながらも、レトロな趣味をもち、古典的なSFやファンタジーを愛する魅力的な人物です。アパートの生活の中で、ニナとの心の通じ合いが深まります。

ニナ・フレキシブル

ニナはダンの下の階に住むフレキシブル家の娘で、彼女の驚異的なESP（超能力）が物語に新たな展開をもたらします。彼女の愛は年齢差を超え、時に微笑ましく、時に苦悩を伴うものです。

アーチボルト

天才児であるアーチボルトは、度の強い眼鏡をかけたSC（特別教育クラス）の生徒です。非常に理知的な彼は、時々道を逸れて少しおどけた一面を見せたり、ニナとの関係を通じて成長を見せます。

フレキシブル夫人とスタンダード・フレキシブル

彼らの両親は、家庭内でのニナとアーチボルトの騒動にしばしば巻き込まれる普通の主婦と商社マンです。家族のダイナミクスが物語をさらに面白くしています。

温泉八重

温泉八重は、シリアスな一面も持つハウスキーパーであり、物語の中で徐々にそのバックグラウンドが明らかになります。彼女は非常に多才で、ダンやニナに対して深い愛情を持っています。

最後に

『私を月まで連れてって!』は、心温まるラブストーリーとSFの要素が見事に融合した作品で、時代を超えた人間関係やコミュニケーションについて深く考えさせられる内容となっているのが魅力です。多様なキャラクターたちが織りなす物語は、読者に笑いと感動を与え、何度も読み返したい一冊と言えるでしょう。

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