章姫

章姫（あきひめ）: 静岡の代表的なイチゴ品種

章姫は、イチゴの中でも特に人気があり、静岡県で誕生した品種です。この品種は1992年に静岡市のイチゴ農家である萩原章弘によって開発され、以来静岡イチゴの顔として広く知られています。しかし、2007年に日本における品種登録が期限を迎え、静岡県ではより新しい後継品種である紅ほっぺへの移行が進められています。

開発の背景

章姫は、久能早生と女峰という2つの品種を交配し、育成されました。この品種の特徴は、収穫量が豊富でありながら、甘みが非常に強い点です。また、摘花を行うことで果実の大きさが増すため、農家の生産者にとっては非常に魅力的な選択肢となっています。章姫は宝交早生と比較して果実が大きく、さらに酸味が少ないため、甘さを重視する消費者に人気があります。ただし、完熟後の果皮が柔らかいという特性があるため、輸送には向きません。

開発者の萩原章弘は1999年に亡くなりましたが、息子の萩原和弘がその後を継ぐ形で育種活動を続けています。

生産量の変遷

静岡県のデータによれば、1993年時点でのイチゴ生産において、女峰が70%を占める一方、章姫は12%に過ぎませんでした。しかし、1996年までには章姫の生産量が推移し、逆に女峰を追い越す結果となりました。2010年には紅ほっぺが82%に達する中、章姫の割合は18%に減少してしまい、次第にその地位が変化していることが明らかとなります。

韓国における権利侵害

韓国では、萩原和弘の許可を得ずに大量に章姫が栽培される状況が生じており、この問題は深刻です。韓国で栽培された章姫は、輸入された日本産章姫よりも安価で販売されており、2006年頃のデータでは、韓国市場においては章姫とレッドパールが合わせて80%のシェアを持っていました。萩原和弘は、この状況を改善するために韓国の生産者に対して「栽培許可料」の支払いを求めましたが、交渉は不調に終わりました。

この問題を受けて、テレビ静岡は「章姫～父が残したイチゴ～」というドキュメンタリーを製作し、2007年に放送されました。この番組は評価を受け、第16回FNSドキュメンタリー大賞にノミネートされることになりました。

さらに、韓国では章姫と他のイチゴ品種を交配することで新たな品種が誕生し、韓国市場での章姫のシェアが拡大しています。例えば、章姫ととちおとめを交配したクムヒャンや、レッドパールとの交配で生まれたソルヒャン、栃の峰との交配で生まれたメヒャンなどがその例です。

中国での栽培

中国では「奶油草莓」という名称で、多く生産されています。1996年には遼寧省で初めて章姫の苗木が導入され、その後も安定した人気を博しています。

このように、章姫は静岡の地を代表するイチゴ品種として、多くの人々に愛され続けていますが、他国での権利問題や市場の動きが今後の育成や販売に大きく影響を及ぼす可能性があります。

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