絢爛舞踏祭

『絢爛舞踏祭』は、2005年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたシミュレーションゲームです。企画はアルファ・システム、開発はプロキオンが担当し、ゲームデザインは芝村裕吏氏が手がけました。本作は、2004年に放送されたテレビアニメ『絢爛舞踏祭ザ・マーズ・デイブレイク』の原作としても知られています。アルファ・システムが過去に開発した『高機動幻想ガンパレード・マーチ』（以下『GPM』）のシステム的な続編であり、「無名世界観」を共有しているため、一部キャラクターが継続して登場している点が特徴です。

概要

本作は、「今までにない、全く新しいゲーム」というキャッチコピーで宣伝されました。プレイヤーの当面の最終目標は、「火星及び太陽系と周辺星域における今後100年間の平和」を確実なものにすることです。ゲーム内時間で3年間の期限が設けられており、その達成度は「夜明けの船」のメインコンピュータでいつでもシミュレートできます。このシミュレーションは、過去の戦闘結果や社会情勢、乗員同士の友好度などに基づいて行われます。しかし、目標達成への道筋が非常に曖昧であるため、プレイヤーは単に目標を追い求めるのではなく、ゲーム内で自由に楽しみ方を見つけることが推奨されています。この点は、前作『GPM』と同様です。

プレイヤーは、「OVERS-System」というプログラムを介して間接的にゲーム世界に干渉するという設定があり、これは統一世界観を共有する他のゲームにも共通する設定です。

舞台設定

舞台は23世紀の火星です。21世紀半ばに発生した気象異変により、火星の地表はほぼ全てが水で覆われています。人類は「都市船」と呼ばれる巨大な潜水艦型の都市を建造し、海中への入植に成功しました。23世紀初頭には、太陽系外縁で異星人「ネーバルウィッチ」との戦争が勃発し、水資源が豊富な火星は軍需物資の供給地として特需を迎えました。しかし、休戦協定が結ばれると、特需は終焉を迎え、大量の復員兵による失業によって火星経済は未曾有の不況に陥ります。地球政府は戦争に頼らない経済を目指し、異星人との融和政策を推進する一方で、反体制派を弾圧しました。その結果、不況と圧政に苦しむ火星では地球からの独立を求める機運が高まり、革命派武装組織「火星独立軍」が発足し、内戦が続く不安定な状態となっています。

システム

プレイヤーは、潜水艦「夜明けの船」の中で、最大36名の乗員NPCと交流したり、訓練や仕事を通じて日々を過ごします。夜明けの船は常に火星の海を航行しており、船外に出られるのは都市船に入港した時のみです。潜水艦であるため物資は有限であり、定期的な補給が必要です。物資不足は艦内環境の悪化につながります。都市船には、産業、人口、政権支持率などのステータスが設定されており、状況に応じて変化します。暴動やテロ、外部勢力の介入、不況によって人口が激減することもあります。

また、ゲームを中断した場合、再開時には現実の時間経過に応じたゲーム内時間が経過します。この間も戦闘などのゲーム進行が発生するため、不在中に乗員が死傷したり、船が危機に陥ったりする可能性があります。

戦闘

戦闘が発生すると、戦闘部署の乗員は戦闘に参加し、それ以外の乗員は船内待機となります。戦闘結果によっては船体の損傷や火災が発生し、非戦闘員も死亡する可能性があります。戦闘員も、実際にハンガーで機体に搭乗するなどの準備が必要で、行動が遅れると戦闘はプレイヤー不在のままリアルタイムで進行します。

戦闘は「トポロジー」と呼ばれる独特のシステムを採用しています。自機と敵機の位置が三角形のグラフで表示され、三角形の形を合わせるように移動コマンドを入力することで敵に近づき、攻撃できるようになります。近接攻撃が最も強力ですが、魚雷や機雷を使った攻撃も可能です。艦長などの役職を持つプレイヤーは、「夜明けの船」を操作して戦闘に参加します。移動を担当する操舵手や攻撃を担当する水雷手など、各役割に応じてチームワークが必要です。

敵は降伏させたり、近接攻撃で撃破せずに拿捕することも可能です。拿捕した敵艦から物資を奪ったり、捕虜にした敵兵を都市船で解放したりできます。物語開始時、夜明けの船は反乱軍として地球軍に狙われていますが、状況によっては異星人勢力が参戦することもあります。また、民間商船を襲撃して海賊行為をすることも可能です。

登場キャラクター

プレイヤーキャラクターのデフォルト名は「希望の戦士」で、OVERS-Systemを介して操作する人型BALLSです。この他にも多くの個性的なキャラクターが登場します。

ソウイチロー・ヤガミ：プレイヤーを「夜明けの船」に導いた人物で、火星独立軍の指導者「アリアン」でもある。実は人型BALLS。
アキリーズ・ボーランドウッド：通称アキ。陸戦隊員。
ナイアル・ポー教授：火星独立軍の思想的指導者。
エリザベス・リアティ：「夜明けの船」艦長。元宇宙総軍大佐。
アイアン・ソブリン：元軍人のマフィア。操舵手。
MPK4501：機械生命体の異星人で機関長。
BL（ブラック・レイディ）：第3異星人の女性で、『GPM』のヨーコ・小杉と同一人物。
スイトピー・アキメネス・シンフォリカルプス：ゴスロリ姿のお嬢様。
エステル・エイン艦氏族・アストラーダ：第2異星人の少女。
ジョージ・タフト：地球大統領。
エノラ・タフト：ジョージ・タフトの孫娘。
ネリ・オマル：シングルマザーで整備一班。
メイ・カイロン：艦の副長。
リン・ハックマン：フリージャーナリスト。
ポイポイダー：バンドウイルカ知類で航海長。
知恵者：数々のRB設計を行った人物。芝村裕吏がモデル。
S・TAGAMI：テレパス能力を持つ女性。
ヘイハチロー・ノギ少将：太陽系総軍の少将。
イカナ・イカン：第4異星人。
カオリ・サザーランド：250年間冷凍睡眠していた少女で、『GPM』の田代香織と同一人物。
サーラ・シェーシャ：学歴はあるがお姉さん系の軍医長。
クリサリス・ミルヒ：『GPM』の来須銀河と同一人物。
東原恵：『GPM』の東原ののみの姉。
セラ：太陽系総軍のスパイで、『GPM』の悠木映と同一人物。
カール・ドランジ大尉：地球軍大尉。
ミズキ・ミズヤ：日記をつけている少女。
アンナ・グレース：火星傀儡政権主席。
クララ・ド・シラヌ：猫知類。
グランパ：球形ロボット知類。
小カトー・タキガワ：『GPM』の滝川陽平と石津萌の子孫。
マイケル・コンコード：火星先住民。
ハリー・オコーネル：元太陽系総軍中佐。
サウド・モハメッド・アル・サウード：元太陽系総軍の軍人。
ニャメ・ナナ・ニャンコポン：遺伝子治療とサイボーグ化で若返りを図っている女性。
オーキ・マイト：プレイヤーと同じ世界の人間・世界移動存在。
コムラ・イイコ：マイトの同級生。
ネットレース MAKI：夜明けの船のメインコンピューター。

登場兵器

シールドシップ：艦首に絶対物理防壁発生装置を搭載した潜水艦。
夜明けの船：火星独立軍の最大の戦力。
RB（ラウンド・バックラー）：両腕に絶対物理防壁発生装置を搭載した人型兵器。
希望号：小カトー・タキガワが持ち込んだ機体。
士翼号：夜明けの船に搭載されているRB。

開発

芝村裕吏氏は、SCEの永野氏から「『GPM』は失敗だったが、あのようなゲームに可能性を感じているので作ってほしい」という依頼を受け、開発に至ったと語っています。

絢爛舞踏祭