網切

網切（あみきり）とは

日本の伝説的な妖怪、網切は、鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』に収められた妖怪です。これらの画集は、江戸時代に描かれた妖怪たちを詳述しており、網切もその中に含まれています。しかしながら、網切に関する解説や詳細な情報は明記されておらず、その存在意義や由来が今なお謎に包まれています。

頭に蓄えられた姿

網切はカニやサソリのようなはさみに似た特徴を持つ姿で描かれています。その外見は最初に見た人々の興味を引き、恐れを助長する要因ともなっていますが、何を象徴しているのかは定かではありません。このことから、網切は明確な定義を持たない妖怪であり、さまざまな解釈がなされています。

鳥山石燕の意図

網切の描写は、石燕の他の作品に見られるように、先行する妖怪絵巻などからの影響を受けている可能性が高いです。特に、『百怪図巻』に見られる人間の髪を切る妖怪「髪切り」との関連性が指摘されています。多くの妖怪がこうした先行資料を参考にして描かれている中、果たして網切という存在も同様のものなのか判断がつかないため、現代において更なる研究が望まれています。

また、妖怪研究家の多田克己は、網切の名前は網（あみ）という言葉と小型の甲殻類であるアミを関連づけた言葉遊びから生まれた可能性があると仮説を立てています。このように、網切が何を想像させるかに関して、さまざまな思考が交錯しているのです。

昭和以降の捉え方

昭和の時代に入り、網切という妖怪に関する記述が増えてきました。この時期、網切は「蚊帳」や「すだれ」を切る存在として説明されることが多くなりました。これにより、網切の役割は時とともに変化してきたことが理解できます。

作家の山田野理夫の著書『東北怪談の旅』には、山形県庄内地方での伝承として、網切が漁村の魚網をむやみやたらに切り裂くという話が紹介されています。この話によると、ある人が魚網を家の中に隠した結果、夜中に虫除けの蚊帳が網切に襲われ、全身を蚊に刺される事態に至ったという想像力豊かなエピソードが語られています。しかし、妖怪研究家の村上健司は、この伝承が他の資料で裏付けられないことから、網切に関する伝承は山田の創作ではないかとも指摘しています。

結論

その存在が語られることが少ない網切ですが、名前や姿からは豊かな想像力を掻き立てる要素がいくつも見え隠れします。歴史や文化、物語に溢れた日本の妖怪界において、網切がどのように変化し、広がっていくのか、今後の研究によって明らかになることを期待したいものです。

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