総州

総州：上総国と下総国を指す歴史的地域呼称

「総州」とは、古代日本の地方区分である令制国の上総国と下総国のいずれか、もしくは両国をまとめて指す呼称です。上野国と下野国を合わせた「上州」や「野州」と同様の命名規則に見えますが、実際にはやや複雑な歴史的背景を持っています。

上総国と下総国を個別に区別する際は、それぞれ「南総」と「北総」という呼称も用いられます。しかし、この区別は必ずしも明確ではなく、現代の行政区分と完全に一致するわけではありません。例えば、茨城県西部の地域も歴史的には総州に含まれるとされ、言葉の本来の意味からは「北総」に分類されるべきですが、現在ではそう呼ばれることは少ないのが現状です。

さらに、千葉県東部は「東総」とも呼ばれ、また『南総里見八犬伝』のように、南総の範囲には安房国が含まれる場合もあります。このように、総州、北総、南総、東総といった呼称の範囲は、必ずしも令制国の範囲と完全に一致するとは限りません。

上総国と下総国を明確に両国を指す場合には「両総」という呼称も用いられ、これは上野国と下野国を指す「両毛」と同様の用法です。歴史書『将門記』では上総国と下総国を「上下の国」と表現していますが、文脈から上野国と下野国を指しているわけではないと推測できます。

また、上総国と下総国の国境付近を指す言葉として「両国」も用いられますが、これも他の令制国の国境付近を指す際の用法と同様です。

房総、南総、北総といった地域呼称は、必ずしも令制国の範囲と一致するとは限りませんが、総州（および房州）という呼称は、主に明治維新以前の文献で使用されており、令制国の範囲とほぼ一致すると考えられています。

総州という呼称は、その定義や範囲が必ずしも明確ではない点に注意が必要です。歴史的背景や文脈、そして使用される地域によって、その意味合いが微妙に変化する複雑な呼称と言えるでしょう。現代の行政区分と比較検討しながら、歴史的な資料を紐解くことで、初めてその多様な意味を理解できるのです。

本稿では、総州という地域呼称の多義性と複雑さを、歴史的背景や現代の行政区分との比較を通して解説しました。より深い理解のためには、歴史資料や地方史の研究が不可欠です。今後、さらなる研究を通じて、総州という呼称のより正確な理解が進むことが期待されます。

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