英俊

英俊の生涯と業績

英俊（えいしゅん）は、1518年に大和国で生まれた戦国時代の僧侶であり、興福寺多聞院主として知られています。彼の号は長実房で、一般には多聞院英俊と呼ばれ、僧侶としての活動は広範囲に及びました。

出生と修学

英俊は、興福寺大乗院方坊人の十市氏の一族として育ちました。父は盛眼、母は不明ですが、彼の幼少期からの教育環境は学問を重んじるものでした。11歳の時に興福寺妙徳院へ入門し、1533年には師匠である長蓮房英繁から得度を受け、長実房の号を名乗りました。母の死後、彼は夢の中で赤童子に導かれたことで、人生を学問に捧げる決意を固めました。

その後、英俊は多聞院主として多くの修行を重ね、法印権大僧都に昇進し、さらに大乗院門主の尋憲の後見人としても活躍しました。彼は唯識について深く学び、発心院祐算のもとでその知識を研鑽しました。また、尋円と尋憲の間の対立を調整し、兄弟のように支え合っていました。彼の周囲には尊敬される僧侶たちが集まり、晩年には一乗院尊政からも指導を仰がれる存在となりました。

多聞院日記とその影響

英俊は、戦国時代の事件や周辺の動向を記した『多聞院日記』の重要な著者でもあります。この日記は、応仁の乱以降の時代からすでに存在していましたが、英俊は1534年から死去するまでの約60年間にわたり、その内容を執筆し続けました。彼の記録は、戦国時代の実情を詳細に知るための貴重な史料となっており、彼の弟子たちの記録も混在しています。そのため、後世の人々にとっては、この日記が彼の思想や生活を理解する手助けになっています。

ただし、日記の原本は失われてしまっており、近世中期の写本を通じて伝わっています。現代の歴史文献の中で、英俊の記録は重要な位置を占めています。

愛猫と戒名

英俊は猫と犬を愛し、その日記には数多くの動物に関する記述が見られます。猫が子どもを生んだ時には喜び、犬が怪我をしたときにはその悲しみを表現しました。特にエピソードの中で、彼の愛猫が亡くなった際には、「不憫、不憫」とその悲しみを記し、『妙雲禅尼』という戒名を自らの愛猫に付けました。これにより、彼は日本初の猫への戒名を授けた僧侶としても知られることとなりました。

彼が愛してやまなかった猫の死は、彼にとって深い悲しみを伴うものであり、戒名を付けることでその愛情を表しました。このエピソードは、英俊がただの僧侶である以上に、感情豊かな人間であったことを示しています。

結論

文禄5年（1596年）に英俊は亡くなりましたが、彼の業績は今なお多くの人々に記憶されています。学問と人間性の両面で多くの功績を残した彼の存在は、戦国時代の中での僧侶の役割を考える上でも非常に重要です。

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