茂山千五郎家

茂山千五郎家について

茂山千五郎家（しげやま せんごろうけ）は、日本の伝統芸能である狂言の名門で、特に大蔵流においてその名を知られている。本家は京都に拠点を置き、主に関西で活躍してきたが、近年ではメディアへの出演が増加し、全国的な活動も展開している。現在の家長は十四世茂山千五郎（本名は茂山正邦）で、家業の伝承に尽力している。

家の歴史と江戸時代

茂山家は江戸時代に遡り、元々は京都の狂言師として活動を開始した。その名を確立したのは、江戸後期に現れた9世茂山千五郎正虎である。彼は呉服商の息子で、初めは「佐々木忠三郎」の名を名乗っていたが、8世茂山久蔵英政に養子入りし、「千吾正虎」と名乗るようになった。

正虎は若い頃からその才能を発揮し、天保元年（1830年）に彦根城での能会で急遽代演した際には、藩主井伊直弼に感心され、その場で家に迎え入れられることとなった。この出来事が契機となり、以後の家名は「茂山千五郎」として知られることになった。直弼が能楽好きであったことから、彼が復曲した曲目が茂山家の特別な演目として重視されるようになった。

明治から戦後の歩み

正虎の子供のうち、長男と次男が早世し、三男の市蔵が後継者となった。市蔵は初めは放蕩にふけっていたが、父の死後、芸を学び、10世千五郎を襲名した。正重は誰でも楽しめるテイストの狂言を目指し、「お豆腐主義」と呼ばれる家訓を確立した。

その後、正重の養子である真一は、11世千五郎を襲名し、狂言の保存活動に尽力した。彼は1976年に人間国宝に認定され、後に四代共演を果たす喜びも味わった。

次世代の担い手たち

正重の時代以降、家系に男子が生まれなかったが、真一の子供たち、七五三と政次はそれに続く存在となった。七五三は彼自身のスタイルでの狂言で人気を博し、また政次は多才な演出家として活躍した。両者はそれぞれのキャリアを築き上げ、狂言界に多大な影響を与えた。

現代の活動

七五三の息子である正義と弟の眞吾はそれぞれの道で努力し、正義は千五郎家の跡取りの役目を果たしたが2019年に亡くなった。眞吾は長老として一門を指導し、2023年には人間国宝に認定された。彼までが続く家系の伝統は、子孫たちにもしっかりと受け継がれている。

正邦（十四世千五郎）を中心に、茂兄弟や眞吾の子たち、そして分家のあきらなどが活躍し、茂山千五郎家は新たな時代へと突入している。彼らの狂言は、時代の変化に柔軟に対応しながら、伝統を守りつつ革新を遂げている。

ファンクラブとさらなる展望

茂山千五郎家は1997年から「クラブSOJA」というファンクラブを運営し、ファンとのつながりを深めるためのイベントや情報を提供している。新型コロナウイルスの影響で独自の配信イベントも行うなど、時代に即した形での活動を展開している。これからも、茂山千五郎家はその伝統を守りながら新たな挑戦をすることが期待される。

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