菊地宏

菊地 宏（きくち ひろし）

1972年、東京都に生まれた菊地宏は、現代日本建築界で活躍する建築家であり、教育者としても知られる存在です。武蔵野美術大学造形学部建築学科の教授として、後進の指導にもあたっています。

建築家としての道のりは、東京理科大学での学びから始まりました。同大学工学部第一部建築学科を1996年に卒業後、大学院工学研究科建築学専攻でさらに知見を深め、1998年に修士課程を修了しています。学生時代には、1996年の第5回JIA東京都学生卒業設計コンクールで金賞を受賞するなど、その才能は早くから認められていました。

大学院修了後、菊地氏は日本の著名な建築家である妹島和世氏が主宰する妹島和世建築設計事務所で短期間の経験を積みました（1998年-1999年）。その後、活躍の舞台を海外に移し、スイス・バーゼルを拠点とする国際的に高名な建築ユニット、ヘルツォーク＆ド・ムーロン建築事務所に在籍（2000年-2004年）。この期間、彼はプラダ南青山店やサントヤコブタワー、さらには北京オリンピックスタジアムといった世界的な注目を集めるプロジェクトに携わり、大規模かつ革新的な建築の実践に深く関わりました。

2004年に帰国後、菊地氏は自身の建築設計事務所を設立し、本格的に独立した活動を開始しました。以来、住宅、商業施設、文化施設など多岐にわたる建築設計を手がけています。彼の代表作には、プリズミックギャラリー（2005年）、松原ハウス（2005年）、LUZ STORE（2006年）、南洋堂書店改修（2007年）、大泉の家（2009年）、浜田山の集合住宅（2009年）、畑の見える家（2011年）、尾根道の家（2012年）、半円ヴォールトの家（2015年）などがあります。これらの作品は、それぞれが持つ固有の場所性やプログラムに対応しつつ、空間の質を深く探求する姿勢がうかがえます。

菊地氏の建築活動は、多くの受賞によって評価されています。学生時代の賞に加え、独立後も2006年と2009年にグッドデザイン賞、2006年と2009年に東京建築士会住宅建築賞（2006年は奨励賞）、2006年にJCDデザインアワード入賞、2012年にINAXデザインコンテスト入賞など、国内外でその設計力が認められています。

建築作品の設計活動と並行して、自身の建築観や設計手法を示す展覧会も積極的に開催しています。2005年のプリズミックギャラリーでの個展を皮切りに、「自然観察から生活の豊かさへ」（2007年）、「光の到達するところ」（2007年）、「THE MODELS」（2008年）、「FOTOTEST」（2009年）といったテーマで個展を開催。また、東京国立近代美術館での「建築はどこにあるの？7つのインスタレーション展」（2010年）や、「東京の微地形模型展」（2011年、2012年）など、注目されるグループ展にも参加し、建築の可能性を探求する姿勢を示しています。

教育者としては、母校である東京理科大学での助手・非常勤講師を経て、京都造形芸術大学や共立女子大学、法政大学でも教鞭をとりました。特に武蔵野美術大学では、2008年に非常勤講師として関わり始め、2010年には准教授に就任、2018年からは教授として、建築教育における中心的な役割を担っています。実務経験と理論に基づいた指導は、多くの学生に影響を与えています。

菊地宏氏は、国内外の著名な事務所での経験を基盤に、自身の建築設計事務所で独創的な作品を生み出し続ける一方、教育の現場でも精力的に活動することで、建築界に多角的に貢献しています。その作品と活動は、現代建築における空間のあり方や、社会との関わりについて問いを投げかけ続けています。

関連情報

東京理科大学
武蔵野美術大学
新建築住宅設計競技
ヘルツォーク＆ド・ムーロン
妹島和世
菊地宏建築設計事務所

もう一度検索