葬儀を終えて

葬儀を終えて

『葬儀を終えて』は、1953年に発表されたアガサ・クリスティの推理小説であり、名探偵エルキュール・ポアロが主役を務めています。本作は彼のシリーズ作品第25弾にあたり、クリスティの独特なプロットと緻密なキャラクター描写を備えています。

あらすじ

物語は、富豪アバネシー家の当主リチャード・アバネシーの葬儀を皮切りに展開します。葬儀後、親族たちがエンダビー・ホールに集まり、リチャードが残した莫大な遺産の配分について説明される場面が描かれます。リチャードの遺産は、弟や甥、姪たちに六等分される予定であり、この発表に一見単純な喜びを表す末妹コーラが口にした言葉が物語の核心に迫ります。「だって、リチャードは殺されたんでしょう？」。この何気ない言葉が、彼女の周囲に不穏な空気をもたらすことになります。

コーラは少し頭が弱く、無邪気な性格で知られています。彼女のこの発言は他の親族からは軽く流されますが、彼女の言葉には真実がしばしば含まれているため、葬儀後の親族たちの心には疑念が芽生えます。その翌日、コーラは家で残酷な方法で殺されているのが見つかります。家政婦ギルクリストの証言によれば、リチャードが死ぬ数週間前にコーラを訪れていたことが明らかになります。

ポアロは、アバネシー家が抱える謎を解くためにエントウイッスル弁護士に依頼され、調査を開始します。家族全員が遺産を巡ってそれぞれ異なる思惑を抱いており、次々と浮かび上がる容疑者たち。その過程で、家族の動きやコーラの死が示唆する背後の真実が次第に鮮明になっていきます。

家族の中には、リチャード亡き後も遺産を強く望む者が多く、彼らの思惑が複雑に絡まり合います。実際、スーザンはコーラの持ち物を整理する中で、彼女が生前に絵を描いていたことを知り、アートを巡る秘密が暴かれる瞬間が訪れます。だが、コーラの葬儀の直後に起こった家政婦への事件や、コーラの描くスタイルに関する疑問がさらに深い謎を生み出します。

物語は、次第にサスペンスとともにポアロの推理が進んでいく様子を描き出します。エンダビー・ホールの装飾の詳細やギルクリストの知られざる秘密が、次第にポアロの思考を深めていきます。また、遺産の欲望が引き起こした一連の殺人事件の背後にある人間の心理も鋭く描かれています。最終的に、ポアロは驚くべき真犯人を突き止め、作品の謎解きが完成に向かいます。

評価と評価

この小説は、1971年や1982年の日本のクリスティ・ファンによるベスト投票で上位を記録し、2005年には「海外ミステリーのオールタイム・ベスト100」にも選ばれています。そのため、本作はクリスティ作品の中でも特に評価が高く、洗練されたプロットが多くの読者を魅了しています。

アガサ・クリスティが描く人間の心理ドラマと推理の妙を楽しむことができる本作は、ミステリーファンだけでなく、多くの読者にとっても魅力的な作品となっています。

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