赤膚焼

赤膚焼（あかはだやき）

赤膚焼は、奈良県奈良市や大和郡山市に点在する窯場で作られる陶器です。その特徴は、赤みがかった乳白色の素地と、奈良絵文様にあります。

歴史的背景

赤膚焼の起源は、奈良県の五条村近くの五条山にあります。ここは、古くから陶器の生産が盛んだった地域で、民間でも土器や火鉢などが作られてきました。桃山時代に入ると、茶道が広がりを見せ、奈良の土風炉などの茶道具が製作されるようになり、赤膚焼は産業として定着していきます。

伝説によれば、天正年間（1573 - 1592年）に豊臣秀長が尾張から陶工の与九郎を招いて五条山で窯を開いたのが赤膚焼の始まりとされていますが、具体的な文献や物品は残っていません。

江戸時代の発展

1786年に大和郡山藩主・柳沢保光の庇護を受けて、商人・住吉屋平蔵が試験窯を設置。信楽の陶工・弥右衛門がここで作陶を行いましたが、この時点ではまだ名称が決まっていませんでした。その後、藩により赤膚山に本格的な窯が設立され、陶工・丸屋治兵衛が優れた焼き物を作り出しました。この頃から「赤膚焼」として広く知られるようになりました。

しかし、保光の没後は再び民間に戻ります。奥田木白が陶工として活動を始め、嘉永3年には名工としての地位を確立。京焼の技術を取り入れ、赤膚焼の技法が発展していきました。

窯の変遷と影響

嘉永年間には五条山周辺で、元の窯が中の窯と呼ばれ東西に分かれ「東の窯」「中の窯」「西の窯」となりました。各窯には異なる陶工が所属し、それぞれの特徴を持った焼き物を生産していました。

明治時代に入ると、赤膚焼の陶工たちの名前が文献に登場し、次第にその名声が広まりましたが、第一次世界大戦後の経済危機によりいくつかの窯が廃窯に追い込まれました。大正時代には赤膚焼が地場産業として発展し、商工省に記録が残されています。

1941年には銀座松屋で「赤膚山元窯作品展示会」が開かれ、当時の文献には「中の窯」だけが残存していると記されていました。2007年には古瀬堯三窯の登り窯が国の登録有形文化財に指定され、現在も見学が可能です。

特色あるデザインと技法

赤膚焼の代表的な器は、赤みがかった素地に乳白色の萩釉を施し、奈良絵と呼ばれる絵付けがなされています。奈良絵は、庶民的なデザインで、素朴さを強調した微妙な構図が特徴です。器の裏には「赤膚山」の刻印が施されており、江戸時代から続く伝統を受け継いでいます。

現在、奈良県には古瀬堯三を含む六つの伝統工芸士が活躍し、それぞれが独自のスタイルで赤膚焼を生産しています。赤膚焼は、歴史を大切にしながらも、現代においても多くの人々に愛され使用されています。

今後も赤膚焼を日常的に楽しむことで、この伝統的な陶器の魅力が広がり、保存されていくことでしょう。

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