近大マグロ

近大マグロとは

近大マグロ（きんだいマグロ）は、近畿大学水産研究所にて1970年から構想・研究が始まり、2002年に完全養殖に成功したクロマグロです。これは、近畿大学が運営する株式会社アーマリン近大の商標であり、サステイナブルな水産業への貢献を目的としています。

完全養殖の特徴

近大マグロは、天然から捕獲した稚魚を養殖するのではなく、養殖施設での人工孵化により生まれたマグロです。この手法により、マグロ資源の減少を防ぐことが可能となりました。研究初期には、マグロの稚魚が極めてデリケートで、衝突死や共食いによって多くが失われてしまうという課題がありましたが、研究者たちは様々な対策を講じることで、20年以上の年月を経て克服に成功しました。

クロマグロは、その大型な体躯から「本マグロ」とも称され、近大マグロの最大記録は287cm、404kgに達したこともあります。現在、年間2.5万トン前後の漁獲量があり、それが全体の約1.4％を占めており、高級魚として「海のダイヤ」と呼ばれる所以です。

養殖の進化

2015年以降、近畿大学は水槽での完璧な養殖研究を進めており、富山県射水市の実験場では新たな試みとして、径10メートル、深さ3メートルの水槽で実験が実施されています。また、岡山理科大学との提携により、陸上で海水なしに稚魚を育てるプロジェクトも始動しました。これは都市部や内陸部でも実現可能な新たな養殖技術の開発を目指しています。

産業化の取り組み

養殖業界での生餌依存が長らく問題とされていましたが、2008年にはクロマグロ用の配合飼料が開発され、経済的な実現可能性が生まれました。加えて、中間育成段階では、近畿大学と豊田通商の子会社「ツナドリーム五島」が連携し、生存率を格段に向上させることにも成功しています。これにより完全養殖マグロの大量生産が現実のものとなり、2020年には日本国内の養殖需要の半分に匹敵する年間30万尾の稚魚生産を目指しています。

販売戦略と新商品

近畿大学とその関連会社を通じて、成魚は百貨店や飲食店に供給されています。2014年には、エースコックと共同開発した「近大マグロ」を用いたカップ麺が発売され、業界に新風をもたらしました。その後もカレーパンや美容液など、多くの関連商品が展開されています。さらに、専門料理店では水産研究所の成果を用いた料理が提供され、直接消費者に届けられる形になっています。

将来の展望と課題

現在、若干の課題がありますが、完全養殖が進むことで人工種苗への需要は少なくなり、天然種苗の需要が高まっています。さらなる販売戦略と育種努力が求められています。消費者の意識改革も必要で、特に持続可能性を重視した選択を促していくことが、今後の課題です。近大マグロは、完全養殖による未来の水産業を背負う存在として、持続的な成長が期待されています。

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