逸失利益

逸失利益について

逸失利益（いっしつりえき、英: Lost profit）は、ある損害が発生したことによって本来得ることができたはずの利益が失われた状態を表します。この用語は「得べかりし利益」とも呼ばれ、法的な文脈において頻繁に用いられます。逸失利益の算定は、実際にはどの利益が本来のものであったのかを特定することが容易ではなく、訴訟においてしばしば争点となります。

債務不履行による逸失利益

債務不履行の文脈では、逸失利益は消極的損害の一部と見なされます。具体的には、積極的損害とは既存の資産の減少を指し、消極的損害は得られるべき利益の喪失を指します。たとえば、ある商品を他者に転売して利益を得る予定でいたものの、売主の債務不履行によりその利益を得られなかった場合、支払った違約金は積極的損害として扱われ、転売利益を失ったことが消極的損害に該当します。

利用利益

金銭が履行遅滞となると、債権者はその金銭を用いることができなくなります。金銭は運用次第で利益を生む可能性があるため、民法は金銭の給付に関する債務不履行において、具体的な損害の有無にかかわらず、原則として法定利率に基づいて損害賠償額を定めると規定しています。この際、約定利率が法定利率を超える場合は約定利率が採用されます。

転売利益

得べかりし転売利益に関する判例では、商人が商品の価額が低下する状況において、迅速に転売を行うことが見込まれると判断されます。このような場合、履行期における市価が得べかりし転売利益として考慮されるとされています。一方、普段転売を行わない不動産買主が、履行期と引き渡し時点での市価差額に基づく損害賠償請求を認められないこともあります。

不法行為による逸失利益

生命侵害においては、その人が生存していた場合の推定収入から生活費を控除した額が逸失利益とされます。これは、多くの国の法律では少数派の見解とされています。たとえばドイツや台湾では、亡くなった時点で権利能力が失われたと理解されるため、損害を観念する余地はないとされています。

また、遺族厚生年金は社会保障的性格を持つため、逸失利益には含まれないとされていますが、障害基礎年金に関しては逸失利益として請求が可能です。

身体傷害における逸失利益

逸失利益を算定する際には将来の昇給を考慮することもできます。主婦の場合は、平均的な賃金で算出されることが一般的です。自営の企業主の場合は、企業収益の一部に基づいて利益の割合を考慮します。就労していない子どもについては、全労働者の平均賃金を基準に計算され、男女による賃金差が反映されることもあります。

また、障害者に関する賠償は、健常者に比べ低く見積もられることが多く、特に重度の障害者の場合には逸失利益がゼロと判断されることもあります。しかし、近年は障害者の雇用促進が進む中で、逸失利益の算定に関しても変化が見られます。例えば、重度知的障害者の逸失利益が最低賃金を基に算出された判例も存在しています。

中間利息の控除

逸失利益は将来受け取る収入に基づいて計算されるため、中間利息が考慮されます。そのため、逸失利益の算出時には、利息相当分を控除する必要があります。複数の計算方法が定められており、それぞれの方式に応じた計算式が存在します。これにより、公正な計算が行われるようになっています。

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