遠まわりする雛

『遠まわりする雛』の概要と魅力

米澤穂信が贈る短編推理小説集『遠まわりする雛』は、2007年に角川書店から発行された作品で、著者の〈古典部〉シリーズの第4弾にあたる初の短編集です。本作は主人公の折木奉太郎とその仲間たちが織りなす謎解きの物語を描いています。特に、2010年には文庫版も登場し、英訳されたタイトルでは「Little birds can remember」という名を冠しています。この短編集は、2008年版「本格ミステリ・ベスト10」で14位を獲得していることから、その評価も高いことが分かります。

シリーズの背景と特徴

本作は、古典部の高校1年生の春休みまでの一年を描いており、これまでの作品が学内に限定されていたのに対し、今回は学外にも舞台が広がっています。時系列順に整理された短編は、登場人物たちが互いに親しみを持っている姿を描くことを目的としているものの、各短編は発表時には順序を変更している点が興味深いです。

アニメ『氷菓』では、各短編が一話分に充てられ、ストーリーが時系列に沿って展開される構成が取られています。このように、アニメと原作での物語の展開が調和していることは、ファンにとっても魅力の一つです。

各短編の内容

やるべきことなら手短に

この短編では、奉太郎が高校に入学後、古典部に入部して約2週間経過した頃の出来事が描かれます。ある日、女子生徒のピアノ演奏を聞きながら、学校の「七不思議」の一つに関する話が展開され、奉太郎たちがその秘密を探る様子が描かれます。

大罪を犯す

授業中、隣のクラスのえるが数学教師と口論している様子を目撃した奉太郎。放課後の部室で、七つの大罪についての会話が繰り広げられ、続いて、教師が授業範囲を間違えた理由を考えることになります。

正体見たり

夏休み中、温泉合宿の際に起こる怪談の話から始まるこの短編では、奉太郎とえるが民宿で首吊りの影の正体を追い求める様子が描かれます。怪談の背後にある人間模様にも迫る内容です。

心あたりのある者は

この短編は、奉太郎がえるの推理力を疑問視し、校内放送に関する謎を解明するゲームを提案するところから始まります。緊迫した展開の中、奉太郎の推理が思わぬ方向へと進展していきます。

あきましておめでとう

新年の初詣に出向いた二人は、思わぬトラブルに巻き込まれて閉じ込められることに。助けを呼ぶ手段が限られた状況下で、奉太郎が渾身の策を講じる様子が描かれています。

手作りチョコレート事件

摩耶花がバレンタインチョコを里志に渡すために奮闘する姿が描かれていますが、チョコが盗まれる事件が発生し、解決に向けた三人の探偵ぶりが魅力となっています。

遠まわりする雛

春休み、奉太郎がえるの生き雛祭りの準備に協力しますが、工事によって計画が狂い、二人の心の内も揺れ動く情景が描かれます。自分の信条とえるへの気持ちに向き合う奉太郎の様子が印象的です。

登場人物の紹介

本作には、古典部の主要メンバーである奉太郎、える、里志、摩耶花が活躍します。彼らがそれぞれの個性を持ち寄り、物語を引き立てる様子は、魅力的な魅力を生み出しています。

本作『遠まわりする雛』は、日常の中に潜む謎を解き明かす中で成長する若者たちの姿を描き出しており、推理小説としての楽しさはもちろん、友情や成長を感じさせる作品となっています。本作を通じて、米澤穂信の独特な世界観を体験することができるでしょう。

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