陣中日誌

陣中日誌（じんちゅうにっし）について

陣中日誌とは、戦地における出来事や状況を詳細に記録するために作成された日誌で、かつての日本陸軍において重要な役割を果たしていました。大日本帝国陸軍は、「軍令陣中要務令」に基づいて、この日誌の作成を各部隊に命じました。具体的には、陣中要務令の第13篇である「陣中日誌、留守日誌」において、その規定と様式が定められています。

陣中日誌の目的

陣中日誌および留守日誌を作成する目的は主に以下の2つに分けられます。

1. 戦史のための記録

最初の目的は、各部隊や各個人の経歴や戦闘における経験、遭遇した状況と所見を記載することにあります。これによって、将来の戦史に役立てるとともに、各人の勤務や功績の評価にも資することが期待されていました。

2. 軍事に関する経験の記録

次に、編成や教育、補充、休養、衛生、武器、弾薬、器具、材料、被服、装備など、すべての軍事関連事項に関する経験を記録し、未来の改善のための資料とすることが目的とされていました。

日誌作成に関する規定

陣中日誌は、次のような内容を含むことが求められました。

1. 命令や報告の全文
- 作成した命令や通報、報告の内容を正確に記入することが義務付けられていました。

2. 移動履歴
- 部隊の位置を日ごとに詳細に記載し、単に「同じ」と書くのではなく、具体的な変更点を明示する必要がありました。

3. 宿営や行李に関する事項
- おおむねの宿営状況や行李の管理に関する情報も重要とされました。

4. 部隊の編成表
- 主要なタイミングにおいて部隊の編成を示す表や、執務に関わる職員一覧を含める必要がありました。

5. 戦闘状況の詳細
- 戦闘の経過については、隣接部隊との関係を明確にし、特に重要な時点での部隊位置を示す図も添付することが求められました。

6. 戦闘に関する事件
- 戦闘中に起きた出来事を詳細に記録し、必要に応じて地図を用いて表現することが必要でした。

7. 人員移動の記録
- 軍人や馬匹の移動、死傷者の情報を記載し、特に将校や同等官の情報は官職と氏名を記録することが義務づけられていました。

8. 特別な事例
- 戦闘に関連する特別な出来事や施設についても記録することが求められました。

作成を義務付けられた部隊

この陣中日誌は、大本営の各部、各種司令部、連隊、大隊、中隊など、多くの部隊によって作成が義務付けられました。また、師団および独立部隊の指揮官や留守部隊においても同様に日誌の作成が求められました。

これらの記録は、戦地での活動を正確に伝え、将来の戦史を豊かにするために重要な役割を果たしました。日誌の作成は、動員令を受け取った日から始まると定められており、戦地における組織の実態を明瞭に伝えるための貴重な資料として、現在も評価されています。

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