電子ドラム

電子ドラムとは

電子ドラムは、アコースティックドラムの代替として開発された電子楽器です。打面を叩いた際の振動をセンサーで感知し、その電気信号を用いてサンプリングされた音やシンセサイザーによって生成された音を鳴らします。音はスピーカーやヘッドホンを通して出力されます。

アコースティックドラムと同様の奏法で演奏できますが、ドラムセットに含まれるシンバルの音色も再現可能です。

電子ドラムに対し、電子式ではないドラムを「アコースティックドラム」または「生ドラム」と呼びます。楽器として「ドラム」という場合、アコースティックドラムと電子ドラムの両方を指すことが一般的です。

サンプリング技術を用いない電子ドラムは、シンセサイザー・ドラム（シンセドラム）と呼ばれることもあります。

歴史

1970年代

1971年、ムーディー・ブルースのドラマー、グレアム・エッジとサセックス大学のブライアン・グローヴス教授が共同で世界初の電子ドラムを開発しました。この電子ドラムは実験的なもので、商業販売はされませんでした。

1976年には、ポラード・インダストリーズが世界で初めて電子ドラムを商業的に販売しました。ポラード・シンドラムと名付けられたこの電子ドラムは、ジョー・ポラードとマーク・バートンの2名によって開発され、複数のドラムパッドと音源モジュールで構成されていました。しかし、当時の技術ではアコースティックドラムの音色を再現することが難しく、商業的には成功しませんでした。

1978年、デイヴ・シモンズがシモンズ (楽器メーカー)を創業しました。

1980年代

シモンズは、特徴的な六角形のパッド形状、独自の回路設計によるスネアドラム音、叩く場所や速度によって音色が変わるシンバルパッドなどの高い技術力で電子ドラムに革命を起こしました。ヤマハのDX7デジタルシンセサイザーと並んで80年代を象徴する音色として知られ、多くのミュージシャンが使用しました。六角形のパッド形状は、パール楽器製造、ローランド、ヤマハといったメーカーにも模倣されるほど人気を博しました。

しかし、シモンズの電子ドラムには欠点もありました。ゴム製のパッドは静粛性に優れるものの、打感がアコースティックドラムとは異なり、演奏時に腕への負担が大きいという問題がありました。また、叩き方によっては騒音が発生し、家庭での使用には不向きな面もありました。

さらに、価格も高価であり、特に1989年に発表されたSDXという機種は、高性能なサンプラー機能を搭載していましたが、非常に高価であったため、販売台数は伸び悩みました。

1990年代

1997年、ローランドはTD-10を発表し、電子ドラムにさらなる技術革新をもたらしました。数学的モデルによる音色合成技術によりアコースティックドラムに近い音を実現し、REMOと共同開発したメッシュ生地のパッドを採用することで、静粛性とリアルな打感を両立させました。また、センサーの精度向上により、叩く速度や位置の検出精度が高まりました。ヘッドホンを使用すれば騒音を気にせず練習できるため、練習用途でも広く利用されるようになりました。

主な電子ドラムメーカー

ローランド（日本）
ヤマハ（日本）
ALESIS（米国）
MEDERI（香港）

関連項目

ドラム
ドラムセット

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