静岡市立北部図書館

静岡市立北部図書館

静岡市立北部図書館は、静岡県静岡市葵区与一に所在する公共図書館です。旧静岡市が推進した図書館整備計画「7館構想」に基づき、計画された7番目の図書館として開館しました。

この図書館の建設地は、静岡市与一六丁目にあった旧静岡県立厚生保育専門学校の跡地の一部を活用しています。静岡県から静岡市が土地を取得し、変形した北東方向の敷地特性を最大限に生かした施設配置が計画されました。また、当時老朽化していた静岡市教育センターが新たな移転先を探していたことから、多くの利用者が訪れやすい1階部分に北部図書館を配置し、教職員向けの研修施設である教育センターを2階とする複合施設として整備されることになりました。

北部図書館の設置にあたっては、構想段階から図書館サービスの充実で全国的に定評のある複数の図書館を視察しました。具体的には、伊万里市民図書館、福岡市立中央図書館、日野市立中央図書館、浦安市立中央図書館、東京都立中央図書館、大津市立図書館を訪れ、熱心なアドバイスを得ました。特に、視察先図書館の館長とは長時間にわたる面談を行い、深い知見を吸収しました。さらに、各館の許諾を得て、図書館内の書架や設備など、個々の要素について実地での計測記録も丹念に行いました。これらの視察で得られた知見が、その後の設計に大きく活かされています。

館内の書架、家具、カウンター、テーブル、キャレル席、机、椅子、ベンチ、おはなし室の階段席、閉架書庫の書架やCD架など、図書館の主要な設備は、スタッフの長年にわたる図書館勤務経験に基づき、独自に設計・製作されました。中でも、地震発生時の安全性を考慮した「オリジナル設計免震書架」は、サン設計事務所、金剛、ホートク、そして静岡市立図書館の司書たちが、ミリ単位の精密さで検討を重ねて設計し、製作・設置された特筆すべき設備です。これにより、地震時にも書架の倒壊や資料の散乱を防ぎ、利用者の安全を確保しています。

読書環境の質を高めるため、自然の光の下で快適に読書できる空間を目指しました。当時の静岡市公共施設としては初めて間接照明を採用し、この考えに基づいてオリジナル間接照明器具付き免震書架が製作・設置されました。これにより、館内の照明は目に優しく、落ち着いた雰囲気を作り出すとともに、防災面にも配慮がなされています。

換気を効果的に行うため、窓には網戸と付け庇が設置されました。特に安倍川沿いという立地を生かし、自然の風の流れを取り込みつつ、雨の吹き込みを防ぐように窓の設計が工夫されています。また、室内音響への配慮や防音壁の設計・製作も実施され、静かで集中できる環境が整えられました。図書館の窓ガラスには、貴重な図書館資料が日焼けするのを防ぐため、UVカットフィルム処理が施され、さらに必要に応じて使用できるロールスクリーンも配置されています。

施設全体の設計方針、部屋の配置、書架の配置など、細部にわたる計画は、サン設計事務所、日成建設、金剛、静岡市公共建築課、社会教育課といった関係者が一丸となって熱心な議論を重ねながら進められました。

特に重要な点は、建設の実施設計段階から市民の意見を取り入れた「設計段階からの市民参画」が実現したことです。これは、視察先の伊万里市民図書館の犬塚館長（当時）のアドバイスに感銘を受けたスタッフからの提案が、静岡市立中央図書館長、静岡市教育部長、静岡市教育長によって了承されたことで実現しました。図書館に関わるボランティア（日中に説明会を実施）や地域自治会（当時の町内会、夜間に説明会を実施）など、幅広い年代の市民を対象とした対話の場が複数回設けられ、地元住民や図書館ボランティアから寄せられた要望や意見が設計に反映されました。このプロセスには、静岡市社会教育課、静岡市教育センター、静岡市公共建築課、設計事務所、建設事業者、図書館家具事業者、静岡市立図書館が一体となって取り組み、市民と共に創り上げるプロジェクトとなりました。

静岡市立北部図書館は、2003年（平成15年）4月25日に開館しました。開館以来、「また来館したくなる、くつろぎの市民の書斎」を基本コンセプトとして掲げ、訪れる人々にとって快適で利用しやすい図書館サービスを提供することを目指しています。

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