鬼哭街

近未来上海を舞台にしたサイバーパンク武侠劇『鬼哭街』

『鬼哭街 -The Cyber Slayer-』は、2002年3月29日にニトロプラスから発売された、18禁ノベルアドベンチャーゲームです。武侠小説を下敷きにした独特の世界観と、分岐のない一本道のストーリーが特徴的な異色作として知られています。シナリオライターの虚淵玄氏は、本作について「脊髄の赴くままに書いてしまった」とコメントしており、その奔放な想像力と緻密な構成が融合した作品となっています。

ストーリー：復讐と再生の物語

舞台は近未来の上海。サイバネティクス技術の発達により、超人的な能力を持つサイボーグが跋扈する世界となっています。主人公、孔濤羅（コン・タオロー）は、「紫電掌」の異名を持つ電磁発勁の使い手で、かつて青雲幇という組織の暗殺者として名を馳せていました。しかし、1年前のマカオでの任務中に裏切られ、瀕死の重傷を負います。

九死に一生を得て上海に戻った濤羅は、組織が裏切り者のサイボーグに牛耳られ、最愛の妹・孔瑞麗（コン・ルイリー）が殺害されたことを知ります。さらに、妹の意識は5体のガイノイド（アンドロイド）に分割転写され、バラバラにされたことを知るのです。

濤羅は、妹を殺害した者たちへの復讐、そして、バラバラにされた妹の意識を再統合させるため、巨大な犯罪組織・青雲幇へと戦いを挑みます。孤独な戦いが、今、幕を開けるのです。

魅力的なキャラクターたち

本作には個性豊かなキャラクターたちが登場します。主人公の孔濤羅をはじめ、様々な武術の使い手、サイボーグ技術者、そして、妹の意識を宿した5体のガイノイドなど、それぞれに複雑な過去や目的を抱えています。

孔濤羅（コン・タオロー）：主人公。サイボーグを破壊する特殊な気功「電磁発勁」の使い手。
孔瑞麗（コン・ルイリー）：濤羅の妹。殺害され、意識がガイノイドに分割転写される。
樟賈寶（ジャン・ジャボウ）：豪腕の女衒（ぜげん）。北派少林拳の使い手。
朱笑嫣（チュウ・シャオヤン）：鷹爪功を極めたサイボーグ武芸者。残虐な性格の持ち主。
呉榮成（ン・ウィンシン）：サイバーウェア研究開発企業の社長。策士的な性格。
斌偉信（ビン・ワイソン）：豪軍の補佐。暗器の使い手。
劉豪軍（リュウ・ホージュン）：濤羅の兄弟子にして最大の敵。青雲幇の副寨主。
謝逸達（ツェ・イーター）：ガイノイドの製作者。禁断の技術「魂魄転写」の研究者。

そして、瑞麗の意識を宿した5体のガイノイド、媽祖、ベネトナシュ、ペトルーシュカ、ラースヤ、瑞麗も重要な役割を果たします。それぞれが異なるデザインと個性を持っており、物語に深みを与えています。

全年齢対象版：更なる進化

2011年5月28日には、R-18版から9年を経て、全年齢対象版が発売されました。タイトルは「サイバーパンク武侠片『鬼哭街』」に変更され、レーティングは全年齢対象（15歳以上推奨）に変更されています。

全年齢対象版では、以下の点が変更・追加されています。

レーティングの変更に伴う描写の刷新
キャラクターボイスの採用（フルボイス）
グラフィックの全塗り直し・ブラッシュアップ
装甲悪鬼村正で使われていた縦書きレイアウトの採用
解像度の変更（1024x768ワイドスケール）
新規イメージソング「Soul For The Sword」の追加

これらの変更により、より多くの人が本作の世界観を堪能できるようになりました。

音楽と関連作品

本作の音楽はZIZZ STUDIOが担当し、特にイメージソング「涙尽鈴音響」は、虚淵玄氏も「この曲があってこそ『鬼哭街』は完成する」と評するほど重要な役割を果たしています。また、小説版やドラマCD、そしてニトロ+ロワイヤルなどの客演作品も存在し、世界観をさらに広げています。

『鬼哭街』は、近未来のサイバーパンク要素と伝統的な武侠の世界観が見事に融合した、独特の魅力を持つ作品です。復讐と再生の物語、個性豊かなキャラクター、そして美しい音楽が織りなす世界観をぜひ体験してみてください。

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