Α-グルコシダーゼ

α-グルコシダーゼとは

α-グルコシダーゼ（α-glucosidase; EC 3.2.1.20）は、糖のα-1,4-グルコシド結合を加水分解する酵素です。この酵素は、α-1,4-グルコシド結合を持つ代表的な糖である麦芽糖（マルトース）を分解するため、マルターゼ(maltase)とも呼ばれます。また、アグリコンとして各種アルキル基やアリール基を持つ化合物も基質とします。

生物学的な役割

多くの生物がα-グルコシダーゼを持っており、代謝に関わっています。ヒトの場合、小腸上皮細胞に膜酵素として発現しており、これは吸収直前に二糖類を単糖に分解することで、腸内細菌に栄養を奪われるのを防ぐためと考えられています。酵素の基質特異性は、その起源によって様々であり、配糖体の分解能を持つものや、デンプンを分解するものなどが存在します。特に酵母には豊富に存在しますが、酵母から精製された酵素は基質特異性が低い傾向があります。ヒト腸粘膜からは5種類のα-グルコシダーゼが分離されており、それぞれ基質特異性が異なります。

医療への応用

医療分野では、α-グルコシダーゼ阻害剤が糖尿病治療薬として実用化されています。これは、二糖類から単糖類への分解を阻害することで、食後の急激な血糖値上昇を抑制する効果があります。代表的な薬剤としては、グルコバイ（アカルボース）、ベイスン（ボグリボース）、セイブル（ミグリトール）などが挙げられます。

食品への応用

食品分野では、味の素が「お米ふっくら調理料」を販売しています。これは、α-グルコシダーゼの酵素の力で米の保水力を高め、ご飯をふっくらと炊き上げる効果があります。また、ハーブやスパイスの中には、α-グルコシダーゼ阻害作用を持つものが知られており、食後の血糖値上昇を穏やかにする効果が期待されています。オールスパイスはその代表例であり、その他にもナツメグ、セージ、タイムなどにα-グルコシダーゼ阻害作用が認められています。

α-グルコシダーゼは、消化、代謝から医療、食品まで、幅広い分野で重要な役割を果たしている酵素といえるでしょう。

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