Η

ギリシア文字の「Η, η」（エータ、イータ）は、アルファベットの7番目の文字であり、数価は8です。古典ギリシア語では/eː/、現代ギリシア語では/i/の音価を持ちます。

起源

この文字の起源はフェニキア文字の𐤇（ヘート）に遡ります。当初は[h]の子音を表していましたが、東部イオニア方言ではこの音が消失し、母音を表すために転用されました。イオニア式アルファベットが標準化された後も、一部の方言では[h]音が残存し、マグナ・グラエキアでは「Ͱ」で表記されました。

イオニア・アッティカ方言では、本来の長母音[aː]が[æː]のように変化し、「Η」はこの音を表すようになりました。その後、[ɛː]と合流し、両者を「Η」で表記するようになりました。西暦150年以降、「η」は狭母音「ι」と混同されるようになり、キリル文字やグラゴール文字では両者が区別されなくなりました。

記号としての用法

小文字の「η」は、さまざまな分野で記号として用いられています。

音声記号: [ŋ]（軟口蓋鼻音）の代用として使われることがあります。
数学: 未知数としてξに次ぐ2番目の文字として用いられ、デデキントのイータ関数を表す記号としても用いられます。
物理学: ミンコフスキー計量 ημν=ημν=diag(+1,-1,-1,-1) or diag(-1,+1,+1,+1) を表します。
錯体化学: ハプトと読まれ、金属原子に対する配位数を明示する記号として使用されます。
その他: 粘性係数やエネルギー効率を表す記号としても用いられます。

その他

ギリシア語では、「η」は女性定冠詞の単数を表すために用いられます。例として、「η Ελλάδα」（ギリシャ）があります。

符号位置

Unicode:
大文字 Η: U+0397
小文字 η: U+03B7

参考資料

* W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558

このように、「Η, η」（エータ、イータ）は、ギリシア文字としてだけでなく、様々な分野で重要な役割を果たしている文字です。

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