「艦これ」いつかあの海で

「艦これ」いつかあの海で：波乱の制作と魅力的なifストーリー

2022年11月より放送開始されたTVアニメ『「艦これ」いつかあの海で』は、大人気ブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』の待望のアニメシリーズ第2期です。2015年の第1期、2016年の劇場版以来のアニメ作品となる本作は、その制作過程において数々の困難に見舞われました。

制作の遅延と放送中断

本作の制作発表は2015年に行われ、劇場版との同時進行が謳われていましたが、その後は長らく音沙汰がなく、具体的な動きが見えたのは2019年1月、プロモーションビデオ（PV）の上映時でした。制作会社はENGIに決定されましたが、他のENGI作品が放送される中、本作の放送開始は何度も延期されました。

当初、2022年秋クールに全8話で放送される予定でしたが、第4話の放送直前に「制作の都合」により3週間の延期が発表され、その後も第6話以降の放送が2023年1月に延期されるなど、計2回の長期放送中断が発生しました。最終的には、月1回ペースの不定期放送となり、最終話（第8話）の放送は2023年3月にずれ込みました。

延期理由としては、ENGIの体制、新型コロナウイルスの影響などが挙げられましたが、同時期にENGIが制作していた他の作品が予定通り放送されたことなどから、その真偽は不明瞭な点が残っています。また、制作スケジュールに影響を与えたと公式で発表された新型コロナウイルスですが、2022年秋の時点で脚本、収録、絵コンテは完了していたとされ、遅延の主因ではない可能性があります。

さらに、放送直前になってもオープニングテーマのレコーディングが行われていたという情報や、放送済みのエピソードに修正が入ったことなど、制作現場の混乱がうかがえるエピソードも報告されています。

複雑な権利関係

アニメのタイトル「艦これ」いつかあの海で」は、前半部分と後半部分がそれぞれ別の企業によって商標登録されており、本作のロゴに使用されている英語表記「KanColle」もEXNOAの登録商標です。コピーライトも、原作元であるC2機関、KADOKAWA、「艦これ」第二水雷戦隊の3組に分かれるなど、権利関係が複雑な状態です。

レイテ沖海戦をベースにしたifストーリー

本作の舞台は佐世保鎮守府。時代設定は「今から少し昔…あるいは、少しだけ先の未来」と、曖昧な表現が用いられていますが、英題に含まれる「1944」や、ストーリー展開から、レイテ沖海戦がベースになっていると推測されます。

レイテ沖海戦のスリガオ海峡海戦を起点に、いくつかの艦の除籍・撃沈時期が異なるifストーリーが展開されます。深海棲艦と呼ばれる敵との戦闘、艦娘たちの苦悩と友情、そして戦争の残酷さなどが描かれています。

登場人物と魅力的な艦娘たち

主人公は駆逐艦・時雨。彼女を中心に、多くの艦娘たちが登場します。各キャラクターは個性的で魅力的で、ゲーム版と異なる設定や展開が盛り込まれています。

また、海外の艦娘（Warspite、Iowaなど）も登場します。ゲーム版には大日本帝国と軍事同盟を結んでいたドイツ・イタリアなどの艦船も複数実装されていますが、本作には一隻も登場していません。これは、アニメ制作における様々な制約が関係していると考えられます。

まとめ

「艦これ」いつかあの海では、波乱の制作過程を経ながらも、魅力的なifストーリーと個性豊かなキャラクターたちが織りなす、見応えのある作品となっています。制作上の問題点や複雑な権利関係など、アニメの裏側を知る上でも興味深い作品と言えるでしょう。放送期間やエピソード数の問題があったものの、完結まで漕ぎ着けたこと自体が、関係者の努力の賜物であると言えます。

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