『いちご白書』をもう一度

『いちご白書をもう一度』は、日本のフォークグループ・バンバンによって1975年 8月1日にリリースされた楽曲です。本楽曲はグループの5枚目のシングルとして登場し、後に彼らの代表曲の一つとして広く知られるようになりました。

背景

グループのメンバーであるばんばひろふみは、その当時ラジオの深夜番組で人気を博していましたが、デビューから4年間はヒット曲に恵まれず、不安に苛まれていました。そんな中、彼は荒井由実（現・松任谷由実）の楽曲に感激し、彼女の作る音楽の才能に強い憧れを抱くようになります。ばんばは、荒井に曲を書いてもらわない限り、音楽の道を諦める考えに達し、彼女に曲の依頼をするため色々な方法を試みました。最終的には松任谷正隆を介して荒井と直接会うことができ、特に条件を付けずに一曲の制作を頼みました。この楽曲の成功により、バンバンは活動を継続できることとなり、ばんばは「この曲は私たちの流れを変えた」と語っています。

制作背景

『いちご白書をもう一度』は、過ぎ去った学生時代を懐かしむ内容の歌です。曲名の由来は、1970年に公開されたアメリカ映画『いちご白書』であり、この映画はコロンビア大学での実際の学生運動をテーマにしています。荒井はもともと学生運動に関する曲を書きたいと考えていたところ、ばんばの依頼を受けて曲の制作に取り掛かりました。彼女は初対面のばんばが持つ学生らしさや素直さに感銘を受け、これが創作意欲を掻き立てたと述べています。また、音楽プロデューサーの前田仁が提供する題材が曲作りにも影響を与えました。

ばんばも最初にデモを聞いた際に、あまり知られていない映画のタイトルを使ったことに驚きを抱いたと語っています。歌詞の中に見られる斬新なフレーズが、学生時代を振り返り、懐かしさを感じさせる要素をさらに強めました。

音楽的な特徴

「いちご白書をもう一度」の歌詞には、「就職が決まって髪を切ってきた時」という一節があります。これに対して前田は、「就職が決まるのに髪を切るのはおかしい」とツッコミを入れました。ただし、当時の就職戦線は今と比べて遙かにおおらかだったと指摘されており、こうした状況があったかもしれないとの見解もあります。また、ばんば自身は、優れた成績を収めたために長髪でも内定をもらえた、という解釈を加えています。

本曲は、学生運動がピークに達していた東大安田講堂事件から6年後にリリースされたもので、学生たちが抱える敗北感に触れた内容です。ばんばは歌を「敗北した同世代への鎮魂歌」と表現し、聴く人々に深い共感を呼び起こしました。

セールスと影響

取り上げられたカップリング曲「冷たい雨」は、1976年に他のアーティストによってカバーされるなど、バンバンの音楽の影響も広がりました。

リリース前にばんばが担当するラジオで流したところ、すぐに大量のリクエストが殺到し、結果的にこの曲はオリコンチャートで1位を獲得。その後の年間売上でも上位に位置することになります。具体的には、オリコンチャートで初登場78位に対し、約2か月後にはトップ10に入り、最終的には1位を6週間獲得し、累計売上は75.1万枚に達しました。

他のアーティストによるカバー

バンバンの「いちご白書をもう一度」は多くのアーティストによってカバーされています。1976年には内山田洋とクールファイブがカバーし、他にも多くの名だたるアーティストがこの楽曲を自身のアルバムに取り入れ、世代を超えて愛され続けています。これにより、曲の名はより広く知れ渡ることとなり、当時の学生たちにとっても記憶に残る楽曲となりました。

このように、『いちご白書をもう一度』は、一つの時代の雰囲気を音楽として巧妙に表現した重要な作品です。

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