あきつしま (巡視船)

海上保安庁ヘリコプター搭載型巡視船「あきつしま」

「あきつしま」は、海上保安庁が運用するヘリコプター2機搭載型巡視船です。日本の象徴的な名称である秋津島にちなんで命名されており、その任務は日本の領海警備や海洋権益の保護、そして捜索救難活動にまで及びます。先行艦である「しきしま」をベースに設計されており、その高い能力は、日本の海上安全保障に大きく貢献しています。

誕生の背景

「あきつしま」の建造は、日本の安全保障上の課題に対応する必要性から生まれました。「しきしま」の建造は、プルトニウムの海上輸送護衛を主な目的としていました。フランスから日本への長距離輸送を無寄港で行う必要性から、「しきしま」は、長大な航続距離と2機のヘリコプター搭載能力を備えた設計となりました。しかしながら、予定されていたプルトニウム輸送がその後行われなくなったため、「しきしま」は一般的な警備任務や大規模な捜索救難活動に活躍の場を見出しました。

しかし、「しきしま」の高額な建造費（約350億円）を考慮すると、同型船の建造は容易ではありませんでした。その後、21世紀に入り、マラッカ海峡やソマリア沖における海賊問題、尖閣諸島問題、そして日本の海洋権益の保護といった課題が顕在化し、海上保安庁は新たな大型巡視船の必要性を感じ始めました。

こうした状況を受け、2009年、海上保安庁は「しきしま」に準じたヘリコプター2機搭載型巡視船の建造を計画します。これは、遠方での作戦行動と、日本周辺海域での同時多発事案への対応力を両立させるためでした。そして、2013年、「あきつしま」は竣工し、海上保安庁の戦力に加わりました。

設計と性能

「あきつしま」は「しきしま」をベースに設計されていますが、船体幅や総トン数は拡大され、最新の船級規格にも対応しています。船橋構造物の変更に伴い、艦載兵器の配置にも変更が見られます。「しきしま」に搭載されていた90口径35mm連装機銃は、70口径40mm単装機銃に更新されています。また、20mm多銃身機銃も最新の型式に改良されています。さらに、12.7mm機銃用の銃座も多数配置され、より強力な防御能力を獲得しています。

「しきしま」と同様に、格納庫両舷には放水銃が装備されていますが、「あきつしま」では船首側の40mm機銃の両脇にも高圧放水銃が追加され、消防能力も向上しています。搭載艇についても、「しきしま」の装備に加え、高速警備救難艇2隻が追加され、計6隻の艇を搭載できるようになりました。これらの艇は、様々な状況に対応できるよう、多様な役割を担います。

ヘリコプターは、「しきしま」のAS.332（8トン級）から、発展型のEC.225（10トン級）に更新され、捜索救難活動や警備活動の能力が向上しました。これは、より高度な任務遂行能力を要求される現代の状況を反映しています。

船歴と天皇・皇后のパラオ訪問

「あきつしま」は2013年11月28日に竣工し、横浜海上保安部に配属されました。2015年には、天皇・皇后両陛下のパラオ訪問において、宿泊施設として使用されました。パラオ国際空港と訪問先のペリリュー島の距離が離れていることや、ヘリコプターによる移動が必要なことから、「あきつしま」が選ばれました。これは、天皇の外国訪問において海上保安庁の巡視船が宿泊施設として使用された初めての事例となりました。両陛下のご高齢を考慮し、船内にはバリアフリー化のための改修が行われ、快適な滞在が確保されました。

まとめ

「あきつしま」は、日本の海上保安体制の重要な一翼を担う、高性能なヘリコプター搭載型巡視船です。その高い能力は、日本の領海警備、海洋権益の保護、そして人命救助といった多様な任務に貢献しています。今後の活躍にも期待が高まります。

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