あさひサンライズホール

あさひサンライズホール：地域に根ざした文化の灯台

あさひサンライズホールは、北海道士別市に位置する文化ホールです。1994年に朝日町のホールとして開館し、2005年の士別市との合併後も、地域文化の振興拠点としてその役割を果たし続けています。特に、地域に開かれた公共ホールとしての自主的な取り組みは、「地域に根ざした公共ホールの在り方の成功事例」として高く評価され、「優良ホール100選」にも選ばれています。

設立までの道のり

建設検討委員会

平成時代に入り、朝日町では既存公共施設の老朽化と利用ニーズの多様化が進んでいました。1989年、文化拠点設置を公約に掲げた町長が誕生。これを受け、1990年には朝日町教育・文化センター（仮称）建設検討委員会が発足し、翌年には生涯学習の拠点としての最終答申が町に提出されました。

建設構想

1991年、住民と町議会議員からなる建設委員会が設置され、委員会、議会、町が連携し、具体的な建設構想が練り上げられました。

名称の決定

1991年12月、施設名称の公募が行われ、130点の応募の中から「サンライズホール」が選ばれました。考案者は当時、朝日中学校の教頭を務めていた寺沢孝之氏です。当時は「朝日町サンライズホール」と呼ばれていました。

建設

1992年10月、竹中工務店をはじめとする12の施工者によって建設が開始され、1994年1月に竣工しました。総事業費は約27億円に達し、当時、町の一般会計に匹敵する額となりました。この建設には、ふるさと創生事業の資金も活用されています。

開館後の活動

朝日町時代

1994年9月2日には、最初の町民招待講演として桂銀淑コンサートが開催され、その後1年間、杮落としコンサートなどのイベントが開催されました。1995年度からは、高校生の吹奏楽合宿の利用が始まり、地元住民を対象としたワークショップやコンサートも開催されました。旭川市からのアクセスも良く、合宿利用は順調に推移。2002年度からは演出家串田和美が主催するKushida Working in Hokkaidoや、和太鼓集団・鬼太鼓座の合宿も行われるようになりました。2005年には、串田のプロジェクトの成果として、ベルトルト・ブレヒトの『コーカサスの白墨の輪』がサンライズホール、富良野演劇工場、札幌市教育文化会館で上演されました。

開館以来、自主企画事業の展開を「ホール運営の目玉」と位置づけ、1998年12月には自主事業が100回目を迎えました。しかし、300席というキャパシティでは全ての公演事業を賄えず、朝日町の補助金に加え、北海道や財団法人地域創造などの助成を受けて運営を継続。自主事業100回のうち、黒字になった事業は一つもありませんでしたが、町づくりへの貢献を信じ、事業は継続されました。

2003年度には、札幌在住の演出家・斎藤千鶴が1年間朝日町に滞在し、演劇製作体験プログラムを開始。2004年3月には市民参加劇製作を開始し、「体験版　芝居で遊びましょ♪　『明日も陽だまりで』」を上演しました。この市民参加劇はその後シリーズ化され、毎年1本のペースで製作されています。オーディションは行わず、希望者は誰でも出演できる形式を取りつつ、一定のクオリティを担保することを目指しています。また、ホールへの来場が難しい住民のために、学校、企業、病院などで舞台芸術に触れる機会を提供するアウトリーチ活動も行っています。

合併後

2005年9月1日、士別市との合併により、「朝日町サンライズホール」から「あさひサンライズホール」に名称変更。合併に際しては、サンライズホールの活動縮小を懸念する声も上がりましたが、合併特例区に指定され、事業は維持されるだけでなく、士別市全域へと拡大されることになりました。合併前は朝日町の小中学校のみを対象に行われていた「子ども芸術劇場」プロジェクトは、士別市内の全17校へと拡大されました。

合併後も、鑑賞型事業、参加型事業、アウトリーチ事業、ワークショップ、レジデント事業など、多岐にわたる活動を展開。2006年度には、自主企画事業の公演回数は236回に達し、「体験版　芝居で遊びましょ♪」は2021年3月時点で18回製作されています。

2020年4月からは、一般社団法人舞藝舎が指定管理者となり、施設の管理運営を担っています。

2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の影響により、複数回の休館や公演中止を余儀なくされました。

施設概要

あさひサンライズホールの敷地は、士別市朝日町字中央に位置し、建築面積3477.25平方メートル、延べ床面積4286.05平方メートル、総面積12,680.6平方メートルの鉄筋コンクリート造、地下1階・地上2階建ての建物です。

1階にはエントランスホール、いこいの広場、テシウシの間、こだまホール、事務室、図書室、会議室、和室、調理実習室、研修室があります。2階には視聴覚室、美術工芸室、文化サークル室があります。

エントランスホールは吹き抜けの広い空間で、全体が円形の曲線で構成された柔らかなデザインです。いこいの広場には、時間ごとに変化する空が描かれた天井や、朝日町の自然や動植物、開拓時代の様子を伝える展示があります。こだまホールは300席の多目的ホールで、コンサート、演劇、講演会など幅広い文化活動に利用されています。

地域からの評価と受賞歴

あさひサンライズホールは、開館から2011年度までに年間約4万6000人が来場しており、近隣地域の人口の約7割が年に一度は訪れている計算になります。開設当初から行われた多くの鑑賞事業、自主事業は市民の集う場となり、演劇研究者からは社会包摂的活動のモデルケースとして評価されています。

その多機能性と建築性が評価され、1995年に北海道赤レンガ建築奨励賞を受賞。2000年には音響家が選ぶ優良ホール100選に選出。2005年には、住民参加の開かれた運営が評価され、地域に貢献したコミュニティ・ホールとしてJAFLAアワード（総務大臣賞）を受賞しました。

あさひサンライズホールは、地域住民にとってかけがえのない文化の灯台として、これからもその輝きを増していくことでしょう。

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