ふるさと創生事業とは？意味をやさしく解説

ふるさと創生事業とは

1988年（昭和63年）から1989年（平成元年）にかけて、日本全国の市町村に対して地域振興のために一律1億円が交付された政策です。正式名称は「自ら考え自ら行う地域づくり事業」といい、交付された金額から「ふるさと創生一億円事業」とも呼ばれています。この事業は、バブル[[経済]]期の日本において、地域活性化を目指す大胆な試みとして注目されました。

事業の背景

この事業は、竹下登内閣の自治大臣であった梶山静六氏の発案により始まりました。当初は国費で一律10億円の交付が検討されていましたが、大蔵省の査定により300万円に減額。しかし、梶山大臣の強い意向により、自治省財政局長であった津田正氏が地方交付税での一律1億円交付という打開策を提示し、実現に至りました。地方交付税の増額分を財源としたため、地方交付税の不交付団体には支給されなかった点が特徴です。交付された1億円の使い道については、政府は関与せず、各自治体の自由裁量に任されました。

各自治体の使途

交付された1億円は、各自治体によって様々な用途に使われました。観光施設の整備やイベントの開催など、地域経済の活性化を目的としたものが多く見られました。しかし、中には、モニュメントの建設や箱物行政など、無駄遣いと揶揄される事例もありました。一方で、基[[金]]や補助[[金]]として活用し、将来的な地域振興に繋げようとした自治体も存在しました。

主な使途の例

- 北海道:

- 稚内市: そうや竜ふるさと歴史館を建設。
- 幌延町: 金田心象書道美術館を建設。
- 下川町: ミニ万里の長城を設置。
- 剣淵町: 剣淵町絵本の館を開館。
- 滝川市: スカイスポーツの振興、運動公園、散歩道の整備。
- 夕張市: ゆうばり国際ファンタスティック映画祭を開催。

- 東北地方:

- 青森県黒石市: 純金製・純銀製のこけしを制作。
- 秋田県仙南村: 村営酒場「フォーラムハウス」を建設。
- 山形県山形市: 日本一の芋煮会フェスティバルで使用される大鍋「鍋太郎」を製作。

- 関東地方:

- 茨城県石岡市: 日本一大きな獅子頭を製作。
- 栃木県壬生町: 壬生町おもちゃ博物館の建設。
- 群馬県榛東村: 15年間預金し、利子所得を得た。
- 埼玉県川島町: 川島平成の森公園を整備。
- 千葉県木更[[津市]]: きみさらずタワーを建設。
- 東京都台東区: 区立浅草観光センターにからくり時計を設置。

- 中部地方:

- 新潟県小千谷市: 温泉郷の整備とリゾート開発計画を作成。
- 富山県魚津市: 人工蜃気楼発生装置を開発。
- 石川県内灘町: 温泉を掘り当てる。
- 福井県勝山市: 恐竜化石発掘現場を保護し博物館を設置。
- 山梨県丹波山村: 日本一長いすべり台を作成（完成3日後に日本一の座を奪われる）。
- 長野県長野市: 市境の国道沿いに野外彫刻を設置。
- 岐阜県瑞浪市: 美濃焼の世界一大きい狛犬を作成。
- 静岡県下田市: 吉田松陰と金子重輔のブロンズ像を設置。
- 愛知県蒲郡市: 小学校の屋上に巨大電光掲示板を設置。

- 近畿地方:

- 三重県津市: 和船山車「安濃津丸」を建造。
- 滋賀県栗東市: 長い石段を整備。
- 京都府宇治市: 紫式部文学賞・紫式部市民文化賞を創設。
- 大阪府泉大[[津市]]: 真空パックの毛布を全国の主な都市にプレゼント。
- 兵庫県明石市: 櫓と工業用ロボットによる時報の演出。
- 和歌山県和歌山市: 京橋に憩いの広場やプロムナードを整備。

- 中国地方:

- 鳥取県東郷町: 羽衣石城模擬天守を建設。
- 島根県仁摩町: 一年計砂時計「砂暦」を製作。
- 岡山県笠岡市: 北木島にて石彫シンポジウムを開催。
- 広島県尾道市: 村上水軍の甲冑と伝令船を復元。
- 山口県長門市: 街の景観を統一するCI事業を実施。

- 四国地方:

- 香川県多度津町: ローラー式滑り台を設置。
- 徳島県小松島市: 源義経騎馬像を建設。
- 愛媛県大三島町: 鶴姫の銅像を設置。
- 高知県中村市: 四万十の日を制定。

- 九州地方:

- 福岡県八女市: 磐井を主人公としたアニメーション映画を制作。
- 佐賀県脊振村: 「百円宅地」事業で人口増を達成。
- 長崎県大村市: 天正少年使節帰国400年祭を開催。
- 熊本県龍ヶ岳町: ミューイ天文台を建設。
- 大分県竹田市: 温泉を掘削し「水の駅おづる」を整備。
- 宮崎県高崎町: たちばな天文台を建設。
- 鹿児島県加世田市: 全額を基[[金]]に積み立て。

- 沖縄地方:

- 名護市: リュウキュウアユの放流。
- 南大東村: 星野洞の観光事業整備工事。

事業に対する評価

ふるさと創生事業は、地域活性化の起爆剤となったという評価がある一方で、無計画な支出や無駄遣いが多かったという批判も存在します。自治省（現総務省）による検証は十分に行われておらず、経済効果の測定もなされていません。しかし、愛知東邦大学の宮本佳範教授は、「住民たちが地域の魅力を考え直すきっかけとしては大きな起爆剤になった」と評価しています。

当時の自治省職員であった野平匡邦氏は、この事業を「『何でも使ってください。その代わりいい事業をやったところは評価されるでしょうし、ろくなことをやらなかったところは笑われるでしょうね』という以外には、自治省としては言いようが無い」と述べています。初代地方創生大臣を務めた石破茂氏は、竹下登元首相から「これによってその地域の知恵と力がわかるんだわね」と事業の意図を伝えられたことを明かしています。

北海道恵山町の町史では、「地方自治体に交付金への依存をさらに高める結果となったのではないか」と批判的な見解を示しています。このように、この事業に対する評価は賛否両論あります。

まとめ

ふるさと創生事業は、バブル[[経済]]という時代背景のもと、地域活性化を目指して行われた大規模な政策でした。各自治体の自由な発想による取り組みは、今となっては興味深い事例も多く存在します。しかし、その一方で、無駄遣いや交付金依存という負の側面も残しました。この事業の経験は、今後の地域活性化政策において重要な教訓となるでしょう。

ふるさと創生事業