あした (aikoの曲)

aikoのデビュー曲「あした」：様々な偶然と必然が重なった、記念碑的シングル

1998年7月17日、aikoの音楽人生を大きく彩ることとなるメジャーデビューシングル「あした」がリリースされました。この曲は、aikoの代表曲として知られる多くの楽曲とは異なり、作曲を小森田実（現：コモリタミノル）が、編曲を小森田実と島田昌典が担当しています。aiko本人が作曲を手掛けた楽曲とは異なる独特の風合いを持ち、彼女の音楽性における多様性を象徴する一曲と言えるでしょう。

デビューシングルの発売日が、CDセールスのピークとなる水曜日ではなく、金曜日に選ばれたことにも注目すべき点があります。オリコンチャートの集計方法を考えると、決して有利とは言えない選択でした。しかし、この戦略の裏には、当時aikoとポニーキャニオンとの間で結ばれていた契約形態が関係していると考えられています。スポット契約であったため、このような異例のリリース形態となったようです。後に「花火」の大ヒットによって専属契約に切り替わる転機を迎えるまで、aikoは独特なキャリアパスを歩むことになりました。

「あした」は、映画『新生トイレの花子さん』の主題歌、そしてテレビ番組『新橋ミュージックホール』のエンディングテーマにも起用され、幅広い層へのアプローチに成功しました。しかし、意外なことに、aiko自身はライブでこの曲を歌う機会が長く限られていました。2008年に行われた公演で久しぶりのフルバージョン披露以降、徐々に演奏頻度が増え、今では他の楽曲と同様にライブで歌われるようになりました。

この楽曲は、aikoの音楽性における転換点となっただけでなく、他のアーティストにも影響を与えました。深田恭子のデビューシングル「最後の果実」は「あした」のリメイクであり、aikoは仮歌だけでなく、本収録でもバックコーラスとして参加しています。また、小野綾子（当時オノ・アヤコ）の楽曲「TWO OF US」も、小森田実が作曲を手掛けており、「あした」や「最後の果実」との類似性が指摘されています。これらの楽曲は、共通の作曲家によって繋がっていると言えるでしょう。

「あした」は、当初8cmCDとしてリリースされましたが、これはaikoのメジャー作品としては唯一の8cmCDシングルという点も特筆すべきでしょう。その後、2007年3月21日には12cmCDとして再発売され、8cmCDは廃盤となりました。初回限定盤にはカラートレイ仕様が採用されるなど、ファンへの配慮も伺えます。さらに、ミュージックビデオも2種類存在します。オリジナル版のモノクロバージョンと、モノクロとカラーが混ざったニューバージョンです。後者はMV集「ウタウイヌ」に収録されていますが、オリジナル版は未発売という経緯があります。

さらに、FM大阪でラジオDJを務めていたaikoは、自身の番組で「あした -fm osaka remix-」としてリミックスバージョンをオンエアしたというエピソードも存在します。このことは、彼女の音楽活動における多様な試みの一端を示しています。

「あした」は、単なるデビューシングルという枠を超え、aikoの音楽家としての歩み、そして音楽業界における様々な要因が複雑に絡み合った、記念碑的な楽曲と言えるでしょう。その後のaikoの活躍を予感させる、多くの要素が詰まった一曲なのです。

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