あした逢う人

橋幸夫のシングル『あした逢う人』の魅力

『あした逢う人』は、1962年8月20日にリリースされた橋幸夫の25枚目のシングルです。この楽曲は同名の映画『あした逢う人』の主題歌としても知られています。シングルはビクターから発売（品番: VS-837）され、映画との相乗効果により多くの人々の心に残る名曲となりました。

音楽的背景とリリース

本楽曲の作詞を担当したのは佐伯孝夫、作曲と編曲は吉田正で、橋の恩師である二人が手掛けたものです。橋幸夫は1960年に『潮来笠』でデビューし、わずか3年で数多くのシングルをリリースしてきました。この年、1962年は特に多作で、彼は13枚のシングルを次々と世に送り出しています。

これまでの彼の楽曲は多くが股旅物や時代歌謡に偏っていましたが、1962年からは青春歌謡に進出し始め、特に『あした逢う人』はその現代的なスタイルを代表する一曲となりました。同年の秋には『いつでも夢を』をリリースし、さらにレコード大賞も受賞。その結果、青春歌謡という新たなジャンルを確立したのです。

歌詞の特徴と映画での使用

佐伯の詩は「エルムの梢、時計台、永久に輝く北斗星」という印象的なフレーズで始まります。この美しい言葉に、吉田が叙情的なメロディを乗せることで、楽曲全体に深い情感が加えられています。映画の冒頭では、北海道の美しい風景と共に流れ、この曲は視覚と聴覚の両方で観客に強い印象を与えました。

また、B面にあたる『すずらん娘』も同様に佐伯と吉田の作品であり、映画のもう一つの主題歌として位置づけられています。この楽曲の中で、花の名前が使われているのは『あした逢う人』だけで、橋の作品の中でもユニークな存在となっています。

映画の中では、橋が共演する三条江梨子と二人きりになるシーンでこの曲を歌い上げ、スポーツカーでの疾走シーンでも使用されていました。「スポーツカーで二人きり、山脈を仰ぎとばしたい」という歌詞は、若い恋人たちの自由や冒険を象徴しています。橋自身もその撮影時に、トラックに積まれたスポーツカーでプレスコの歌に合わせて口を動かしていたことを明かしています。

音源の収録状況

『あした逢う人』は、いくつかのLPやCDに収録されていますが、近年のCDに収められることは少なくなっています。収録されている主なアルバムには、1963年の『橋幸夫傑作集第6集』や『橋幸夫ヒットソング集第2集』、さらに2005年の『歌の架け橋～橋幸夫45周年記念』などがあります。また、1993年には『橋幸夫大全集』としてCD-BOXも登場しました。

映画『あした逢う人』について

この楽曲が主題歌として使われた映画『あした逢う人』は、1962年9月16日に公開され、本郷功次郎、橋幸夫、叶順子、三条江梨子が共演しています。監督は井上芳夫で、橋が出演した大映での最後の映画となります。橋はボクシングが得意な高校生藤川民夫役を演じ、三条は姉時江役を務め、物語の中心となる恋のキューピット役として活躍しました。カラーで制作されたこの映画は、約1時間29分という長さで、多くの観客に愛されました。

まとめ

全体として、『あした逢う人』は橋幸夫の音楽キャリアにおいて重要な位置を占める楽曲です。青春歌謡の潮流を受け、彼の才能を存分に発揮した一曲として、今もなお多くのファンに親しまれています。

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