あすか (人工衛星)

あすか（ASTRO-D）について

あすか（ASTRO-D）は、正式には第15号科学衛星ASTRO-Dといい、別名ASCA（Advanced Satellite for Cosmology and Astrophysics）とも呼ばれています。日本の宇宙科学研究所によって開発され、製造は日本電気が担当したこの衛星は、日本における4番目の宇宙X線観測衛星です。1993年2月20日、鹿児島宇宙空間観測所からM-3SIIロケットで打ち上げられました。

運用の経緯

あすかは約8年間の運用期間中に、数多くの観測を実施しましたが、2000年7月14日に発生した巨大な太陽フレアによって、地球の大気が膨張し、衛星の姿勢が崩壊する事態に見舞われました。以降は最低限の機能による運用を続けていましたが、2001年3月2日に大気圏に突入し、その運用を終えることとなりました。

主な機器と技術

あすかには、3つの主要な観測装置が搭載されていました。まず、X線望遠鏡（XRT）は、その直径1.2mの反射望遠鏡で、アルミニウム-金多重薄板方式を採用しています。次に、撮像型蛍光比例計数管（GIS）とX線CCDカメラ（SIS）があります。これらの装置の組み合わせにより、同一の天体において、撮像観測とスペクトル解析を同時に行うことができる点が大きな魅力です。

特にSISは、世界で初めてX線CCDを受光素子として用い、高いエネルギー分解能を持つスペクトル観測を実現しました。GISは、その大きな受光面積によって、銀河団のような広範囲な天体の観測が可能でした。

重要な観測成果

あすかの運用の間に、のべ2,000個以上の天体を観測しさまざまな成果を挙げました。その中でも特に注目すべきものを以下に紹介します。

1. 降着円盤の観測：あすかは、大質量ブラックホールを持つとされるケンタウルス座の活動銀河中心核MCG6-30-5の高分解能スペクトルを解析しました。その結果、降着円盤から放射された鉄の特性X線を観測し、相対論的効果による非対称なピークを確認しました。

2. 宇宙X線背景放射：宇宙にはX線の背景が広がっており、その起源は長らく謎でしたが、あすかはこの背景放射の約30%が特定のX線源からのものであると初めて確認しました。

3. 中質量ブラックホールの発見：1996年には、おおぐま座のスターバースト銀河M82内に、太陽の数百倍から1000倍の中間質量のブラックホールが複数存在する証拠を発見しました。これにより、大質量ブラックホールの形成過程についての新たな理解が進むこととなりました。

まとめ

あすか（ASTRO-D）は、その高度な観測機器と技術により、宇宙のさまざまな現象についての理解を深める重要な役割を果たしました。その成果は、今後の宇宙科学研究においても、多大な影響を与え続けることでしょう。また、あすかの観測データは、今もなお多くの研究に利用されており、宇宙科学の最前線で活躍し続けています。

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