あの日々の話

映画『あの日々の話』：青春の一夜を描いた群像劇

2019年4月27日、全国順次公開された日本映画『あの日々の話』。本作は、玉田真也監督の初監督作品であり、独特の青春群像劇として注目を集めました。主演を務めたのは山科圭太で、彼は玉田監督と共に本作の企画も担当しています。

舞台からスクリーンへ：若者たちのリアルな姿

『あの日々の話』は、玉田真也監督が主宰する劇団「玉田企画」で2016年に初演された舞台作品を映画化したものです。舞台版にも出演した俳優が多数キャスティングされている点も特徴的です。映画版では、大学サークルの二次会という密室空間を舞台に、OBと現役大学生9名の男女が織りなす一夜が、リアルかつユーモラスに描かれています。

カラオケボックスでの出来事を中心に、若者たちの滑稽で無様な姿、そして人間関係の複雑さが繊細に表現されています。結束を深めようとする決起会のはずが、思わぬ発言をきっかけに、9人の人間関係は思わぬ方向へと転がり始めます。女性陣と男性陣の間には微妙な空気が流れ、特にOBと現役大学生の間には、距離感を感じさせるシーンも描かれています。

キャストとスタッフ：豪華布陣が集結

主演の山科圭太をはじめ、近藤強、木下崇祥、野田慈伸、前原瑞樹、森岡望、高田郁恵、菊池真琴、長井短、太賀、村上虹郎など実力派俳優が多数出演。監督である玉田真也は、原作・脚本も担当しており、作品世界を深く理解した上で演出に臨んでいます。

スタッフ陣も、撮影の中瀬慧、照明の玉川真人、音響の黄永昌、美術の濱崎賢二と福島奈央花など、それぞれの分野で高い技術を持つプロフェッショナルが集結。彼らの技術によって、カラオケボックスの閉塞的な空間と、登場人物たちの感情が、よりリアルに表現されています。

インスピレーションの源泉：三浦大輔の劇「男の夢」

本作は、三浦大輔作の劇「男の夢」から着想を得ています。2018年10月の東京国際映画祭上演以降、冒頭にその旨のクレジットが表示されるようになりました。この影響は、作品全体に漂う独特の雰囲気や、登場人物たちの心理描写に反映されていると言えるでしょう。

東京国際映画祭出品作品：高い評価を獲得

『あの日々の話』は、第31回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ部門」に出品され、高い評価を得ました。キャッチコピーである『男と女と欲望と。100分一夜、珠玉の与太話―』は、本作の雰囲気を的確に表していると言えるでしょう。

まとめ：青春の光と影を描いた傑作

『あの日々の話』は、単なる青春映画にとどまらず、若者たちの複雑な人間関係や、社会への違和感、そして未来への不安といった普遍的なテーマを、ユーモラスでありながら深く掘り下げた作品です。カラオケという閉鎖的な空間を舞台に、登場人物たちの感情の揺れ動きが繊細に描かれ、観る者の心に深く響く作品となっています。一見、軽妙なコメディーのようにも見えますが、その奥には、青春の光と影が複雑に絡み合った、深い味わいがあります。

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