あるぜんちな丸級貨客船

あるぜんちな丸級貨客船の歴史

概要

あるぜんちな丸級貨客船は、大阪商船が1938年から1939年にかけて建造した貨客船のクラスで、その設計は一級の海軍要件を考慮していました。このクラスは、主に「あるぜんちな丸」と「ぶら志゛る丸」の2隻で構成されており、国策の一環として華やかに南米航路での運航を目指しました。しかし、第二次世界大戦の勃発により、その運航は大きな影響を受けることとなります。歴史研究者の野間恒は、これらの船を「戦艦大和の商船版」と表現し、さまざまな機能が調和された設計の巧みさを讃えています。

建造背景

1916年に始まった大阪商船の南米航路開設に伴い、貨客船の需要が高まりました。1930年代に入ると、他の航路会社との競争を経て、大阪商船はこの路線を独占し、貨物の取扱量は増加傾向にありました。しかし、当時の経済不況は海運業界に影響を及ぼし、多くの中古船が動かない状況が続いていました。日本海軍の支援を受けた大阪商船は、1932年から1937年にかけて、新しい船舶の建造を進めることになります。しかし、その要件は厳しいものでした。

このような経緯から、あるぜんちな丸級貨客船が計画され、優秀船舶建造助成施設の下で建造が進行しました。大阪商船は当初想定していた船の設計を修正し、最終的に2隻の艦船が完成しました。

設計と特徴

設計チームは大阪商船工務部長の和辻春樹を中心に構築され、船体には丸みを帯びた形状と流線形の上部構造を採用しました。煙突のデザインは、当時の大型船では画期的なものであり、船首の形状も独特でした。水線下の設計は三菱長崎造船所の成果に基づいており、全体的な推進効率を高める配慮がなされています。

内部では、船客サービスの向上を目指し、当時の外国豪華客船に負けない故に、各種の施設を整備しました。様々な客室や娯楽施設が設けられ、特に外国人観光客の取り込みも考慮されていました。さらに、日本の工芸技術を取り入れた甲板装飾が施され、戦争中でも日本の技術を国外にアピールすべく努力がなされました。

機関と性能

あるぜんちな丸級貨客船は、8,250馬力を誇る11気筒のディーゼル機関を2基持ち、当時としては前例の少ない設計となっています。振動軽減装置が取り入れられ、技術的課題にも取り組みました。その結果、乗客に快適な航海を提供できる船が完成しました。

就航と運命

建造途中での戦争の影響により、あるぜんちな丸はその後、空母「海鷹」として運用されましたが、実際の活躍期間は短く、わずか3年半でその生涯を終えます。一方、ぶら志゛る丸は戦争中に沈没しました。大阪商船の社運を賭けて建造されたこの2隻は、その存在意義を早々に失いました。これらの船はいわば「佳人薄命」を具現化したような運命であったとされています。

結論

あるぜんちな丸級貨客船は、その実用性と豪華さから日本の海運史に名を刻む船となりました。その技術やデザインは、当時の海運業界の中でも非常に先進的であり、国家の要求が強く反映されている点で深い意義があります。シンプルに言えば、あるぜんちな丸級貨客船は、その短い生涯にもかかわらず、特色ある形で日本の近代海運を象徴する存在でした。

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