あるぜんちな丸

あるぜんちな丸

概要

「あるぜんちな丸」は、日本における貨客船の歴史の中で特筆すべき存在です。初代は、1938年2月に三菱長崎造船所で起工され、1939年には竣工しました。この船は、当時の貨客船として初めて1万トンを超える艦艇であり、国が誇る豪華な船として位置付けられました。処女航海は1941年に行われ、主に移民輸送に従事、その後、太平洋戦争では特設運送船に改装され、空母「海鷹」としての役目を果たしました。戦後、二代目が建造されましたが、初代の伝説は今なお色あせることがありません。

製造と初航海

初代「あるぜんちな丸」の製造は、当時の造船技術の集大成でした。起工から進水までの期間は短く、竣工した後には神戸港でのお披露目が行われ、名士や皇族が招かれました。村田省蔵社長のスピーチには、戦争に役立つ船となることが期待されていたことが伺えます。

船内は豪華絢爛で、一等喫煙室や食堂、特別室が設計され、特に「富士の間」には美しい壁画が施されました。航海中には様々な催し物も用意され、日本からの海外貨客船として外国人観光客の受け入れも強化されました。

処女航海は、昭和14年7月に横浜港を出港しましたが、戦争の影響を受けることになります。南アメリカへ向かう最初の航海で、緊急事態や対日感情の悪化を背景とした困難に直面しました。その中でも船の姿勢を保ち、中立を明らかにしながら航海を続けました。

海軍徴傭

1941年に海軍に徴傭された後、初代「あるぜんちな丸」は軍用の特設運送船に改装されました。この改装では、武装が施されるとともに、当時の乗組員がそのまま継続して乗船しました。特に注目すべきは、ミッドウェー作戦に向けた輸送任務で、多くの陸戦隊員を乗せて行動することとなります。

しかし、作戦中にミッドウェー海戦が勃発し、「あるぜんちな丸」は反転を余儀なくされました。帰還後はアリューシャン列島への輸送任務に従事し、戦争の厳しさが増す中で活躍を展開しました。これにより軍事輸送の重要な役割を果たす一方で、従来の客船としての名残も感じられました。

戦後と二代目の登場

戦後、日本の造船業界が復活する中で、第二代「あるぜんちな丸」が1958年に建造されました。初代とは異なるタービン機関を搭載し、さらなる移民輸送を目指しました。しかし、日本の移民数が減少する中でこの船も苦境に立たされます。1963年には新会社に移籍し、運営形態も変化しました。

特に1964年以降、移民船としての使命が薄まり、クルーズ船としての運航が強化されましたが、依然として経済的な困難に直面し続けました。1972年には「にっぽん丸」と改名され、最終的には1976年に解体されることになります。

まとめ

「あるぜんちな丸」は単なる船舶に留まらず、日本の歴史と移民政策を象徴する存在です。その豪華さ、戦時の役割、そして戦後の変遷を経ていくつかの歴史的意義を持っています。初代のものは特に、日本の海運の黄金期を支えた重要な船として語り継がれるべきです。

もう一度検索