いいじゃありませんか

いいじゃありませんか

「いいじゃありませんか」は、日本の歌謡界において不滅の金字塔を打ち立てた歌手、三橋美智也（みはし みちや）によって発表されたシングル作品です。このレコードは、1982年4月21日にキングレコードから発売されました。

本シングルに収められた二つの楽曲は、いずれも当時フジテレビ系列で放送されていたテレビアニメ『おじゃまんが山田くん』の主題歌として使用されました。具体的には、レコードのA面に配されたタイトル曲「いいじゃありませんか」と、B面に収録された「みんな達者でね」の両方が、このアニメーション作品を彩る楽曲として多くの視聴者に届けられたのです。同じアニメ作品の主題歌を、シングルのA面とB面に分けて収録するという構成は、当時のシングルとしては一般的な形式の一つでした。

このシングル「いいじゃありませんか」は、三橋美智也の数多い作品の中でも、特にユニークな位置を占めています。それは、キングレコードが当時展開していたレーベルの一つであり、主にアニメーションや特撮関連のサウンドトラック、主題歌などを専門に取り扱っていた「スターチャイルド」からリリースされた点にあります。通常、三橋美智也のシングルやアルバムはキングレコードのメインレーベルから発表されていましたが、本作品は例外的にスターチャイルドからのリリースとなり、氏にとってこのレーベルから発表された唯一のシングル作品として記録されています。演歌界の大家がアニメソング専門レーベルからシングルを出すという事実は、当時の音楽業界において異色の出来事として捉えられました。

「いいじゃありませんか」の楽曲は、シングルの発売と同年にキングレコードのメインレーベルから発表された三橋美智也のオリジナルアルバム『ふるさと絶唱』（1982年発売／レコード番号: K28A-269）にも収録されています。これにより、シングルを購入したファンだけでなく、アルバムを通して楽曲に触れる機会も提供されました。アルバム『ふるさと絶唱』は、三橋美智也がその歌唱力と表現力で日本の「ふるさと」を歌い上げた作品集であり、そこに「いいじゃありませんか」が収められていることは、この楽曲が単なるアニメソングに留まらない普遍的な魅力を持っていたことを示唆しています。

シングルの収録曲に関する詳細は以下の通りです。

いいじゃありませんか
歌唱：三橋美智也
作詞：望田市郎
作曲・編曲：川口真
収録時間：3分21秒
フジテレビ系テレビアニメ『おじゃまんが山田くん』主題歌（A面）

みんな達者でね
歌唱：三橋美智也
作詞：望田市郎
作曲・編曲：川口真
収録時間：3分29秒
フジテレビ系テレビアニメ『おじゃまんが山田くん』主題歌（B面）

両楽曲の作詞は望田市郎（もちだ いちろう）氏が担当し、作曲および編曲は川口真（かわぐち まこと）氏が一貫して手がけました。望田氏による親しみやすい言葉選びと、川口氏による軽快でありながらも情緒を感じさせるメロディーライン、そして丁寧な編曲が、三橋美智也の温かく力強い歌声によって見事に表現されています。『おじゃまんが山田くん』というコメディタッチのアニメにふさわしい、明るくリズミカルな曲調が特徴です。

これらの楽曲は、初出のシングルおよびアルバム『ふるさと絶唱』に収録されただけでなく、その後の年代に発売された三橋美智也のベストアルバムや全集にも繰り返し収められています。顕著な例としては、1991年に発売された三橋美智也の音楽活動を網羅した40枚組CDボックスセット『歌こそ我が生命』（品番: KICX-6021〜40）にも収録されていることが挙げられます。これは、「いいじゃありませんか」という楽曲が、単発のアニメタイアップに終わらず、三橋美智也の代表的なレパートリーの一つとして長く評価され、愛され続けている証と言えるでしょう。

「いいじゃありませんか」が発表された1982年は、多種多様な音楽が生まれ、ヒットチャートを賑わせた年でした。演歌という日本の伝統的な音楽ジャンルを代表する存在であった三橋美智也が、当時のサブカルチャーの担い手であったテレビアニメの主題歌を担当したことは、音楽ジャンルの境界線が流動的になりつつあった時代の流れを示す一例とも解釈できます。このシングルは、そのユニークな背景と、三橋美智也の芸風とは一線を画すような明るいサウンドによって、彼のキャリアにおける特異点として、また1982年の音楽シーンの一コマとして記憶される作品です。

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