いかさま賭博

いかさま賭博（いかさまとばく）

いかさま賭博とは、金銭や物品を賭ける勝負事において、参加者を欺き、不当な利益を得るために行われる詐欺行為の一種です。単なる運の要素による敗北ではなく、巧妙に仕組まれた不正によって結果が操作される点が特徴です。この行為を行う者は「いかさま師」や「ゴト師」と呼ばれ、特別な技術や道具を駆使して相手に気づかれずに勝負を有利に進めます。

巧妙な手口とその道具

いかさま師たちが用いる手口は多岐にわたります。これには、高度な手先の技術によるカード操作（例: シャッフルのように見せかけて順番を操作する、特定のカードを抜き取るなど）やサイコロの制御（例: 特定の面を出す技術）、特定の合図（サイン）による共犯者との連携、さらには仕掛けのある道具や特殊な印をつけた賭博用品の使用が含まれます。

具体的には、以下のようなものが用いられることがあります。

• - マークドカード: 背面や側面に特定の模様や傷をつけることで、表面を見ずにカードの種類を識別できるようにしたトランプなど。
• - 細工されたサイコロ: 重心や形状を操作し、特定の目が出やすいように加工されたサイコロ。
• - 仕掛け付きの賭博台: 特定の部品が操作できるルーレット台や、カードの配り方を制御できるブラックジャック台など。

これらの不正な手段は、通常の賭博では考えられない確率操作を可能にし、いかさま師が常に有利な状況を作り出すことを目的としています。

いかさま師の歴史的背景

興味深いことに、「いかさま師」という言葉は、かつて手品師とほぼ同義で使われていました。これは、いかさま行為が、観客を巧妙に欺くマジックの技術と共通する部分が多かったことを示唆しています。相手の注意を引きつけながら、見えないところで不正な操作を行う技術は、手品師がいかに観客を驚かせるかという技術と表裏一体であったと言えるでしょう。しかし、その目的がエンターテイメントではなく、金銭を騙し取る詐欺にある点で大きく異なります。

確率操作の核心

いかさま賭博の最も悪質な点は、確率の操作にあります。通常の賭博では、結果は偶然に左右されるため、統計的な確率（期待値）に基づいて勝敗が決まります。しかし、いかさま師は、見かけ上は公平な確率で勝負が行われているように見せかけながら、実際には自分にとって圧倒的に有利な確率になるように状況を歪めます。これは、前述のような不正な技術や道具によって達成され、相手は気づかないうちに、勝つ見込みが極めて低い、あるいは全くない勝負に参加させられていることになります。このような「勝つチャンスがある」という虚偽によって財産を奪うことが、詐欺の本質です。

日本における法的扱い

日本においては、そもそも賭博行為自体が刑法によって原則として禁止されています。このため、いかさま賭博の被害者は、自身も違法な賭博行為に参加していたという後ろめたさを感じやすく、警察などの捜査機関に被害を訴え出ることが極めて稀であるという現状があります。

しかし、いかさま賭博は単なる賭博違反を超えた詐欺罪にあたる悪質な犯罪として認識されています。特に重要なのは、過去の最高裁判所の判例です。この判例では、いかさま賭博の胴元が、賭博客に対して「勝つ機会が全くないのに拘らず、その機会があるかのように欺罔（だますこと）した」行為について、通常の賭博場開張図利罪ではなく、より重い刑罰が定められている詐欺罪の成立を認めています（詐欺罪は10年以下の懲役、賭博場開張図利罪は3月以上5年以下の懲役）。

この判例は、いかさま賭博が、単に賭博場を提供して利益を得る行為とは異なり、相手を騙して財産を奪うという詐欺の本質を備えていることを明確に示しています。被害者に勝つ可能性が全くないにも関わらず、それを隠して賭けさせる行為は、賭博という形式を借りた巧妙な詐欺に他ならないと判断されたのです。

まとめ

いかさま賭博は、見抜くのが困難なほど巧妙な技術や不正な道具を用いて、賭博の場を悪用する詐欺行為です。参加者は知らぬ間に操作された確率の中で財産を奪われ、その性質上、被害が表面化しにくいという側面も持っています。日本では法的にも詐欺罪として厳しく問われる可能性のある悪質な犯罪であり、その手口を知ることは、こうした被害から身を守る上で重要です。

関連語句: イカサマ, 賭博, ゴト

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