いざなぎ景気

いざなぎ景気とは

いざなぎ景気（いざなぎけいき）は、日本の経済史において特筆すべき好景気の一つで、1965年11月から1970年7月までの57か月間にわたって続きました。この時期は戦後最長の経済成長期であり、全体的な国民生活の向上が見られました。

経済状況の背景

いざなぎ景気は、第二次世界大戦後の日本経済が証券不況を乗り越え、成長軌道に戻ったことから始まりました。当時、アメリカにおける好景気やベトナム戦争の影響もあり、これらが日本経済の回復に寄与しました。特に1966年度から1970年度までの年平均経済成長率は11.8%を記録し、この期間中に日本の国民所得（GNP）は1,428億ドルに達し、西ドイツを抜いて資本主義国としては世界第2位となりました。

「いざなぎ」という名称は、神武景気や岩戸景気をしのぐ経済成長を象徴するためにつけられました。これは日本神話に登場する伊弉諾尊（いざなぎのみこと）から来ています。伊弉諾尊は日本列島を作ったとされる神で、時代を超えた経済的繁栄の象徴ともいえる存在です。

景気の推移と特徴

1964年の東京オリンピックの後、日本経済は一時的な証券不況に見舞われました。しかし、政府は初の建設国債を発行し、金融政策を緩和することで景気回復を目指しました。この新たな政策により、1966年から景気が急速に回復し、いざなぎ景気が始まりました。

この期間には、八幡製鐵と富士製鐵の合併により新日本製鐵が設立されるなど、貿易や資本の自由化に対応するための企業大型合併が相次ぎました。トヨタのカローラや日産のサニーといった手頃な価格の大衆車が登場したことも、経済の活性化に寄与しました。

また、1964年のオリンピックを契機にカラー放送が普及し、カラーテレビの需要が急激に増加しました。国民の所得水準が向上する中で、自動車やエアコンといった消費財の購入も急増し、これらは「3C」と呼ばれる新しい消費の象徴として位置づけられました。

経済成長の結果

1960年代半ばには、国際収支が黒字基調に転じたため、日本経済は安定した成長を遂げることができました。国際競争力の強化に向けた動きが進む中で、企業は設備投資を拡大し、その結果、賃金や物価の上昇がもたらされました。特に、1969年には公定歩合が6.25%まで引き上げられましたが、その年の経常収支は2119百万ドルの黒字を計上しました。

このように、いざなぎ景気は日本が経済大国としての地位を確立する基盤となりました。しかし、景気過熱によるインフレや、過剰投資が影響し、最終的には景気後退につながりました。

いざなぎ景気は、単に経済成長の期間を意味するのではなく、日本の経済構造に大きな変化をもたらした時代の象徴でもあります。

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