いつか… (映画)

いつか…

『いつか…』は、ピンク映画界で知られる髙原秀和が監督を務めた2019年公開の日本映画です。社会の片隅で生きる若者たちの葛藤と再生をテーマに、一人の少女の「生き直し」の物語を描き出します。

概要と公開経緯

本作は、まず2019年3月1日に『濡れた愛情 ふしだらに暖めて』というタイトルで、ピンク映画として劇場公開されました。上映時間は70分でした。その後、同年8月23日には「OP PICTURES+ フェス 2019」という企画の一環として、R-15指定版に再編集された『いつか…』のタイトルで、東京・テアトル新宿にて一般公開されました。このR-15版は、成人向けシーンの一部が短縮され、代わりにドラマ部分が加筆・再構成されており、上映時間は85分と長くなっています。また、テレビ放送時には『人妻の教え子 ふしだらな裏切り』という異なるタイトルで放映された実績もあり、さらに2020年12月2日には『いつか 裏切りは雌の顔』としてDVDがリリースされるなど、複数のタイトルを持つ作品としても特徴的です。

本作は、髙原秀和監督が2004年に手掛けた蒼井そら主演作『つむぎ』の後日譚にあたります。前作にも出演していた那波隆史が同じ役柄で登場し、二つの物語を橋渡しする役割を担っています。

制作エピソードと評価

主演を務めたのは、本作が本格的な演技初挑戦となった小倉由菜です。撮影はわずか3日間で行われましたが、彼女にとって最初の撮影が物語のクライマックスであるラストシーンだったというエピソードも残っています。小倉自身、「なぜ一番最後のシーンを最初に撮るのだろう」と不思議に思ったと後に語っています。

本作は高い評価を受け、2020年4月に発表されたピンク映画ベストテン「桃熊賞」で第1位を獲得しました。また、主演の小倉由菜も桃熊賞の主演女優賞を受賞し、その演技力が評価されました。

テーマとストーリー

映画ライターの寺岡裕治は、本作のテーマについて論評しています。前作『つむぎ』に登場する「終わらないから、ちゃんと始めないとな」という台詞と、本作の「終わらせるのは簡単だけど、やり直すのは難しいでしょ」という台詞が対になっている点などを指摘し、社会から一度脱落してしまった人々が、いかにして再び人生を立て直し、生きていくかという「生き直し」をテーマにした作品であると分析しています。

物語の主人公は、素行不良が原因で高校を中退し、現在は風俗店で働く少女、いつかです。恋人との別れを経験し、生きる目的を見失い、自暴自棄に陥っていた彼女は、ある日、偶然出会った元教師の夫婦との交流を通じて、人生への向き合い方を変えていきます。彼らとの関わりの中で、いつかは学校の勉強だけでなく、人生そのものについても多くを学び、新たな一歩を踏み出すきっかけを得ていきます。

主な登場人物

松崎 いつか（演 - 小倉由菜）
高校を中退し、風俗店で働く主人公。失恋を機に自暴自棄になるが、元教師夫婦との出会いを経て変わっていく。
月島 佐知子（演 - 並木塔子）
元教師。現在はスナックのママとして店を営む傍ら、昼間のランチ営業も計画している。
倉持 ひな（演 - 涼南佳奈）
いつかの高校時代の同級生で、同じく風俗店で働いている。
片桐 真一（演 - 那波隆史）
元教師で、佐知子の内縁の夫。表向きはスナックのマスター。
富樫 広夢（演 - 吉田憲明）
いつかの元恋人。
芦田 チカ（演 - 山田奈保）
広夢の現在の彼女。
アナル先生（演 - 櫻井拓也）
言葉責めに特異な興奮を示す謎めいた男。
川谷 建一（演 - 稲田錠）
佐藤先生（演 - 山岡竜生）
田中先生（演 - 泉正太郎）
アキラ（演 - 山本宗介）
コウジ（演 - 可児正光）
月島 春一郎（演 - 下元史朗）
佐知子の叔父。

スタッフ

監督・編集: 髙原秀和
脚本: 宍戸英紀、髙原秀和
撮影監督: 下山天、田宮健彦
音楽・整音: 野島健太郎
録音: 竹本未礼
助監督: 江尻大、小関裕次郎、島崎真人
スチール: 本田あきら
撮影助手: 高嶋正人
協力: 末永賢、国沢実、永元絵里子、村上典子、五十嵐理
仕上げ: 東映ラボ・テック
制作: ラブパンク
* 配給: オーピー映画

本作は、社会の厳しい現実に直面しながらも、過去を乗り越え、未来に向かって懸命に生きようとする人々の姿をリアルかつ丁寧に描き出し、多くの観客や評論家から支持を得た作品と言えるでしょう。

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